景気拡幅のもとでの現実

「労働通信」2004年5月号

 

もう気付かなければ

京都府医薬品小売商業組合
   常務理事 木尾 昭文

 マスコミによれば景気が上向いているそうです。それなのに私のまわりでそんなことを感じている人は誰もいません。昔は会社の業績が上がれば社員の給料も上がり、回り回ってわれわれ商売人の売り上げもよくなるはずだったのですが、どうなってしまったのでしょうか。

 どうも規制緩和が世の中の仕組みを変えてしまったようなのです。

 昨年の一二月末までの四半期のGDPが対前年比で七%伸びたと小泉・竹中の最悪鉄面皮コンビが得意げな顔をしていましたが、それにたいして経団連の奥田会長が「こんな数字はリストラ効果でしかない。本当の景気回復には新技術の開発が必要だ」とコメントしています。

 現在会社の業績が伸びるということは労働条件の改悪を中心としたコストダウンに成功するということです。つまりそこで働いている人達の利益が減ることを意味しています。そのことを経団連の会長が証言しているのです。

 その奥田会長の会社であるトヨタ自動車は空前の好景気です。日本を代表して大儲けをしているこの会社は去年も今年も頑として給料のベースアップに応じようとしません。一時金で済まそうとしています。しかも労働組合までが、去年よりも今年度の利益の方が大きいと予想されるのにもかかわらず、一時金の要求額を去年の実績よりも少なく提示しています。

 実際に売り上げを伸ばしているトヨタにしてこのていたらくです。この国の労働者の可処分所得は縮む一方です。

 一方、政治の方では、規制緩和のはじまった頃にはそれでもセーフティネットのかけ声だけが言い訳のように語られていました。これが本当にかけ声だけだったことが今や明らかです。実際にやっていることは社会保障への租税負担率の低下と自己負担の増大です。これを言い換えれば、病気になったり歳をとったりして人間が弱者になった時のセーフティネットを小さく粗(あら)くしているのです。最近ではかけ声すら聞かれなくなりました。

 日本人は多額の預貯金を持っていると言われますが、政治がこれでは将来が怖くて誰もそれを使って人生を楽しもうとはしません。

 これが小泉改革の実態です。消費者不況が改善されるはずがありません。痛みを我慢していればいつかは自分らの生活も良くなると信じている人達に申し上げたい。このままでは痛みは永遠に続きます。世の中の仕組みが変わってしまっていることにいい加減気づいて下さい。ナチスに抵抗した牧師さんがこんな意味の事を言っています。

 正義をおこなう時、障害となるのは悪人ではなく愚か者達だと。 

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