「労働通信」2004年5月号

 桜が満開となった四月三日、四日の二日間、京都で現代労働問題研究会(現労研)の第一回総会と全国学習・交流集会が開催された。『労働通信』の発行主体はこの間、「現代労働問題研究会(準備会)」となっていたが、この総会によって「現代労働問題研究会」が正式に発足することとなった。

 総会には、首都圏、関西、中国、九州などの各地から、『労働通信』の読者を中心に、労働組合の役員・活動家や労働者、自営業者などが参加した。初対面の人人もふくめて、学びあい、人と人とのネットワークをつくる場となった。

 総会の初日では、まず参加者の自己紹介をおこなったのち、現労研のたちあげを準備してきた「現労研結成のための世話人会」(『労働通信』編集委員会と読者有志で構成)より、経過報告、規約案、情勢報告活動計画案と予算案などについて提案と説明がおこなわれた。

    →総会のスケジュール(スライド・ショー)

読者アンケートなどを分析

 経過報告では、この間、現労研をたちあげていくうえでは、『労働通信』の読者がもっとも重要な基盤になることをくりかえし議論し、読者アンケートや読者との直接対話などをとおして、読者の要求をつかむことに尽力してきたことを明らかにした。とくに『労働通信』の誌面については、職場の実態レポートや職場からのたたかいなどをとりあげた記事がもっとも読者の関心をあつめていること(グラフ参照)、記事の内容については特定の活動家だけではなく、一般の労働者も読めるような記事にすること、などがもとめられていることを報告した。

 また、現在の資本主義が変化し、これまでの労働組合運動のあり方が通用しなくなったなかで、新たな労働組合運動の方向を意識的に追求することや、現代資本主義の分析、社会主義についての問題なども提起していくことがもとめられていることを明らかにした。

 そこから、現労研のあり方として、@急速に変化する職場の問題、労働問題をどうみるのか、どう解決していくのかについて、情報交換や意見の交換をおこなう、A労働運動、労働組合運動について、たがいの実践や経験を交流し、あたらしい状況のもとでの労働運動のあり方について研究していく、B現代資本主義や労働問題の分析、社会主義などの理論的な問題についても、学習し、研究を深めていく、C以上のテーマについて、労働者、活動家、知識人が、思想・信条や党派などの枠をこえて、率直に語りあえる場をつくり、相互の出会いやネットワークをひろげていく--という方向が提案された。

 規約案は、こうした活動の組織的保証の内容をもりこんだものとして提案された。

 また、情勢報告としては、最近のイラクをめぐる情勢の変化を柱に、いきづまるアメリカの世界戦略のいきづまり、世界の反戦運動の高まり、中国の経済発展と新たな階級闘争の変化、国内情勢では日本経済の「景気回復」の特徴と小泉政権の政治的いきづまり、偏狭な民族主義の横行など、労働運動情勢では、変貌する資本主義の動きと労働構造の変化、労働組合運動の現状と課題などが提起された。

 そしてこの情勢のもとでの現労研の具体的な活動計画としてつぎの7つの課題が提案された。

  1. 各地で『労働通信』の読者会、交流会、学習会など、会員同士で交流し、学習できる場をつくる。
  2. 『労働通信』を読者、会員とともにつくっていく。
  3. 『変貌する現代資本主義とその歴史的運命』を中心に学習と普及をすすめる。
  4. 『労働通信』ホームページを充実させる。
  5. 会員向けのメーリングリストを開設する。
  6. 中国をはじめ国内外でのスタディーツアーを企画する。
  7. 活動の集約として一年後に全国交流会を開催する。

 以上の問題提起と提案をうけて討議にはいった。

変化する職場・労働者・労組の実態をリアルに論議

 この討議のなかでは、これまでの労働組合内での活動や『労働通信』の誌面づくりのための取材活動などをとおして認識を発展させてきたことについて、参加者がそれぞれ発言し、活発な討論をおこなった。

 とくに、技術革新による労働形態と方法の変化、重層的な雇用形態、従業員と職制との関係など、こんにちの職場がどのように変化しているか、そのもとで労働者がどのように意識を変化させ、労働組合がどのように動いているかが深められた。

 おおくの労組役員が組合員数の激減していくことに危惧しており、組合員への組織化と団結をかちとるためにどうするかについて悩んでいること、そしてその根本に、グローバル化や技術革新、規制緩和があることを認識しており、これとのたたかいを組織的にどうとりくむかを追求している、など労組幹部の意識が変化していることも議論された。ニュージーランドではIT(情報技術)の促進で情報通信産業労組の組織率が一〇%を割っていることや日本における派遣労働や労働者同士の競争によって労働組合の存立基盤がおびやかされていることなどもとりあげられて、討議された。

 また、これとの関連で、資本主義発展のなかで肥大化した大企業の支配、それに対応した労働組合の資本とのたたかいに限界があることが問題点として指摘された。

 他方、中小企業では、小泉の「構造改革」のもとでの規制緩和や銀行による「貸しはがし」、独占・大企業による中小企業の縮小と再編の攻撃のなかで経営危機に追いこまれていること、このなかで中小労働者は失業者として路頭にまよい、労働組合は破壊される状況におかれていること、などの意見がだされた。

 このなかで、組合員の意識が分裂状況にあること、資本主義の「高度成長期」につくられた「たたかえばなんでもとれる」とするモノトリ 闘争主義、そして自分のせまい要求、目先の利益だけから出発する闘争が、こんにちの情勢のもとでは完全に破産していること、そして一部ではあるがその影響下にある組合員や組合役員の経験者が自己の利益から出発し、より立場のよわい労働者を蹴落とそうとする傾向さえうまれていることが指摘された。それらが全体の団結を破壊する役割を演じるまでにエスカレートしていること、階級的意識の低さが露呈している問題などが論議された。

 さらに、労働者の意識を発展させることとあわせて、企業別労働組合、産別労働組合について、零細小企業、商店主のおかれている実際、労組共闘や労組と中小・商工業者との共闘のあり方などが討議された。

 これら問題の討議をつうじて、おおくの労働者、労組役員が解決しなければならない焦眉の課題にせまったものとして討議された。そこから現労研活動と『労働通信』の活動の役割と任務が検討されるなど、活動方針の提起された内容がふかめられた。

 いま一つの重要問題である規約(案)の討議は、 現労研の組織の性格と組織機能を決定するうえでどうあるべきかを中心に討議された。

 この討議のあと、経過報告、情勢報告、活動方針と指針、規約などそれぞれの案が全員一致の賛成で承認された。

 そのあと、現労研を一年間運営する役員が選出されて総会をおえた。

大企業と中小企業の労組政策の違いと共通点を論議

 二日目は、全国学習交流会として開催され、二つの職場からの実践報告と『変貌する現代資本主義とその歴史的運命』についての問題提起がおこなわれた。

 職場報告ではまず、大企業の労組活動におけるとりくみが報告された。ここでは、労働組合が組合員の意識からはなれたところで活動しているもとで、先進的な活動家が組合員とのねばりづよい対話をとおして、かれらが心のなかで思っている疑問や問題意識をひきだし、有志のグループをつくって労働組合を活性化していくための活動を開始していることが報告された。そこでは、徹底した討論をつうじて、情報や情勢認識の共有化をはかっていくこと、電話やメールなどの手段も最大限つかいつつ、直接的な対話を重視したことなどが教訓としてだされた。とくに、活動のなかで先進層のなかから、「俺たちはこれだけがんばっているのに、組合員はまったくわかっていない」と、下部組合員にたいして評価するというあやまった傾向がうまれたもとで、このことを徹底した討論をくりかえして、この「忌まわしい病」を克服し、さらに活動を継続発展させていることなどが報告された。

 続いて、中小運送会社でリストラ攻撃に直面している労働組合活動のとりくみが報告された。(詳細は今号の記事『倒産の危機といかにたたかうか』を参照のこと)

 討論のなかでは、二つの職場からの実践をふまえて、現在の情勢のもとでの労働組合活動の展望と政策・方針について具体的に討議された。なかでも、大企業の労組のなかでの活動と中小労組の活動との相違点と共通点が鮮明にされ、大独占が中小零細企業を収奪する構造を変えていく社会的な運動を組織していくことの必要性もあわせて論議された。

「変貌する現代資本主義」について問題提起

 つづいて、「『変貌する現代資本主義とその歴史的運命』をどう読むか」と題して、『労働通信』編集委員会より問題提起がおこなわれた。ここでは、この本の出版の目的が、「現代資本主義を分析し、そこから日本の労働運動の路線、政策を発展させていくためのたたき台」とすることにあることが明確にされた。そして、その具体化として『労働通信』で連載している『変貌する現代資本主義とその歴史的運命―資料とデータ』の内容の説明をおこなうと同時に、この本の内容や連載についての意見、今後の研究を深める方向についての意見を編集部によせてほしいとの要望がおこわわれた。
 
 全国学習・交流集会の終了後、参加者の有志で「春の京都・明治維新ツアー」として、桜冷えのするなか観光スポットの穴場・金戒光明寺などを散策した。

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