![]() |
(2)社会保障制度改悪 |
『労働通信』2003年5月号
二〇〇三年の四月一日から健康保険法が「改正」となった。今回は、それが労働者になにをもたらすかを考えてみたい。
Aさんはこの三月、持病の副鼻腔炎が悪化して、大阪近郊の衛星都市の耳鼻科に通院した。先生は「詳しいことをもっと知りたいので検査を受けてくれ」とのこと。CTの検査を受けにいくと検査料三〇〇〇円がかかるという。「意外と安いな」と思ったがこれが四月になると四五〇〇円になる。この一五〇〇円の差は大きい。交通費はともかく一五〇〇円あれば、一緒についてきてくれた奥さんとも昼飯ぐらいたべられるのに、それが飛んでしまうとは庶民には大きな負担だ。こうしてふつうの人は、病院から遠ざかってしまう。
健康保険は当初、本人の負担はゼロであった。それが一割、二割と増え、四月から三割負担となる。これではただでさえ苦しい家計がいっそう苦しくなるのは一目瞭然だ。
今回の改正の特徴の一つは保険料の総報酬制による徴収である。今までは毎月の報酬を基礎にして保険料を徴収し、ボーナスは賞与の一〇〇〇分の一〇を徴収していた。しかしこれからは年間の総報酬を対象に保険料を徴収することになる。
「健康保険料 新旧対比表」(上記ボタンをクリック)をみてもらうとよくわかると思うが、総報酬制になると被保険者分の負担が一万円以上大きくなる。しかもおもしろいことに事業主の負担分はわずかしか増えていない。事例3の場合では、被保険者の負担は増えるのに、事業主の負担は軽減する。結局のところ三方一両損だといいながら、被保険者だけが保険料も実際の負担も強いられることになるのである。
今回の健康保険法改悪にたいして、日本医師会は最後まで頑強に抵抗した。医師会といえば自民党の大票田。もちろんそこには医師会の既存の権益を守ろうとする動きが見え見えだ。しかし事情はそれだけではない。
現在、日本医師会に所属している医師のおよそ半数は勤務医である。健康保険法が改悪され病院へいく足が遠くなれば、いったいどうなるのか。また株式会社が病院を経営し営利のみを追求し、高額医療の負担できる患者だけをとり扱えばいったいどうなるのか?
難関といわれる大学の医学部を卒業し国家資格をもった医師が患者が減ることで病院経営がなりたたなくなり、失業するという事態をひきおこさないともかぎらない。小泉医療改革はこのような波紋を起こしているのである。
健康保険法の改悪はひとえに労働者だけの問題ではない。病院、医師も巻き込んだおおきな社会問題である。そして次には健康保険料を滞納している国民健康保険の被保険者に矛先が向けられるかもしれない。
日本の資本主義が曲がりなりにも社会主義のまねをしてつくりあげてきたのが現行の社会保障制度である。ここから資本をひきあげ、もっと「成長」する分野に資本をうつしかえる。今回の健康保険法の改正をこのようにみるのは少しうがった見方だろうか?
|
投稿
|
高知県 元医療労働者
私は昨年一二月末、家庭の事情で二年間勤めた中小私立病院を退職した。退職金はなかった。雇用保険の失業給付は、自主退職なので三カ月待機の九〇日給付となるが、病院の事務手続きが遅れたりで、受給は六月からになってしまった。
今年一月から三月までの三カ月間に私の支払うべき税金(保険料)や年金は県市民税二万四五〇〇円、国保税四万七七〇〇円、国民年金一万三三〇〇円×三=三万九九〇〇円で合計一一万二一〇〇円となる。
現在、田舎の自宅に帰って生活しているのでなんとかなるが、一人暮らしではとてもやっていけなかっただろう。
五月より失業給付も改正され、今まで受給期間に働いてもその分は先延べされ給付されていたのに、これからは働いた金額をさしひかれるようになると説明を受けた。
テレビで国保税が払えず(納入期限から一年を過ぎると保険証をとりあげられ、一年六カ月すぎると国保の給付が差し止められる)、病院に行けずガンの末期になってやっと入院した人のことを放映していた。とても他人事とは思えない身につまされる話だ。この人は会社社長で高収入だったため、税金は高額で、倒産して失業し、とても払えるような状況ではなかった。ホームレスになる人が増えるのも当然だ。
政府は失業対策として、失業者の税金の納期の延長や緩和などの措置をとるべきではないだろうか。収入がなくなった人からとるのは酷というものだ。
小泉政権の構造改革により四月一日から年金、医療、介護などの制度が改悪され反人民的政策が目白押しに実施された。
私の知人に教育費と医療費は全額国庫負担にし、無料にするべきだというのが持論の人がいる。そんなことをしたら、国家財政が破綻するかもしれないと思うかもしれないが、防衛費をゼロにすれば、かなりいける。日米安保のもとの国防なら、まったくゼロにしたほうが国民のためにはよいと私も思う。
|
<シリーズ> |