| 特集 労組のあり方が問われる03春闘 |

『労働通信』2003年3月号
厚生労働省の労働政策審議会の労働条件分科会は昨年末に、「今後の労働条件にかかわる制度のあり方について」という報告書を出しました。この報告にもとづいて労働基準法の改定案が今国会に提出されます。
今回の労働基準法改定案で最大の問題になっているのが、「解雇の自由」の問題です。
現在の労働基準法(以下労基法)の基本精神は、使用者にくらべて弱い立場にある労働者にたいして「健康で文化的な最低限の生活を営む権利」を保障しようとする労働者保護法です。これに違反した事業主にたいしては、懲役刑や罰金刑が科せられる強行法規です。
労基法では、「解雇は使用者の一方的な意思表示による労働契約の解除」と解釈していますが、そこには解雇予告期間や解雇制限が設けられており、解雇権があるからといって、いつでもだれでも解雇できるというものではありません。
それに今ではリストラをするにも、判例で確立された「整理解雇四要件」を明確にしないと労働者を解雇できない状況にあります。「整理解雇四要件」とは、@人員整理の必要性があるのか、A解雇回避の努力がやられたか、B人選の基準が合理的か、C被解雇者の納得を得るための協議がつくされたか、の四条件であり、これを満たさないと安易な解雇はできないことになっています。
しかし今回の労基法の改正は「ほんらい使用者は労働者をいつでも自由に解雇できる」ことが原則であり、解雇制限や解雇予告はあくまで例外的な処置であることを明文化しようというものです。それは「使用者は、労働基準法などの規定によりその使用する労働者の解雇に関する権利が制限されている場合をのぞき、労働者を解雇できる。ただし使用者が正当な理由なくおこなった解雇は、その権利の濫用として無効とする」という条文で明らかなように、労災による療養中や産前産後の女性などあきらかに解雇制限されている労働者をのぞいて、いつでも自由に解雇できることを明確にしようとしていることです。
そして、「合理的な理由」がみつかればいつでも労働者を解雇でき、仮に裁判などでこの解雇が無効となったとしても、解雇した労働者を職場復帰させる必要などなく「金銭賠償」でかたをつけることができるというのです。

労基法「改悪」のもう一つの問題は、労働契約期間の延長問題です。
現在の労基法では期間の定めのない労働契約は一年もしくは三年(新商品新技術の開発、満六〇歳以上の労働者の雇用)となっていますが、この期間をそれぞれ三年と五年に延長するものです。
これだけ見ると、「雇用期間が延長されるのでいい」ように思えますが、落とし穴があります。
普通、雇い主は、一年間の雇用期間をさだめていても、その期限が来ても即解雇ということはありません。事業が続いていれば、継続して雇用する可能性が高いです。そしてこのような雇用が何回もくりかえされると、それは「期間のさだめのない雇用」となります。
今回の「改正」のように、あらかじめ雇用期間を三年、五年と定めることは、逆にいえば「三年で解雇、五年で解雇」を雇うときに宣告しているようなものです。労働者としては雇用形態はともかく、「期間のさだめのない労働契約を結ぶ」ことが大前提ではないでしょうか。
派遣労働者にかんしても、労働者派遣法を改定して、派遣期間を現行の一年から三年へと延長することをうたっています。また、これまで派遣労働の適用除外とされてきた社会福祉施設などでの業務や製造業などへも労働者派遣が導入できるようにしようとしています。
派遣労働はもともと、企業にとっては必要なときに、必要なスキルをもった労働者が調達できる制度ですが、労働者にとっては都合の良いときだけつかわれ、不要となったらきりすてられる、きわめて不安定な地位をしいられる制度です。このような派遣労働が製造業へもひろがることは、不安定で無権利な労働者をさらに増加させるとともに、日本の経済を下支えしてきた「ものづくり」の根幹である人的資源を根本から疲弊させていきかねない問題をふくんでいます。
労基法の「改正」では裁量労働制の拡大も検討されています。
裁量労働制には現在つぎの二種類があります。
一つは「専門業務型裁量労働制」で、労働組合や労働者の過半数を代表するものとの労使協定をむすべば 労働時間の配分を労働者の裁量にゆだね、協定でさだめた時間を労働したものとみなす制度です。もう一つは、「企画業型裁量労働制」で、本社や本店など事業運営上重要な決定がおこなわれる事業場で労使委員会を設置し、ここで労働条件にかんする問題を全員一致で決議して、この決議でさだめられた時間を労働したものとみなす制度です。
今回の「改正」では、まず「企画業務型」の労使委員会の「委員全員の合意」を「委員五分の四の賛成」という制度にあらためるとともに、労働者側の委員の条件(職場の労働者の過半数の信任を受けていることが条件)を緩和させようというものです。
裁量労働制自体、どれだけ残業をしているか把握しにくく、結局サービス残業を増加させている原因の一つですが、今回の「改正」は、リストラで職場にのこった労働者へのさらなる過重労働をすすめ、また使用者が労使委員会を通じて(労組だけでなく)自分たちの息のかかった人員を配置し、労働者への支配を強めていこうとする意図が隠されています。
このように、解雇の自由、労働契約の期間の延長、派遣労働の拡大、裁量労働制の大幅な変更によって労働基準法は「労働者保護法」ではなく「労働者切り捨て法」になろうとしています。
小泉流構造改革は、正規雇用の縮小、パート、アルバイトの増加、労働者の弾力雇用をすすめようとしています。今回の労基法の「改正」の正体は、まさに小泉流構造改革とリストラをどんどんすすめるためにお墨付きをあたえるものとなります。
小泉流構造改革と労基法「改正」の正体を見破り、労基法改正反対を声を大にして叫んでいきましょう。