失業問題の解決に役立たない政府の雇用対策

労働分野の規制緩和も政治の焦点へ

『労働通信』2002年1月号

 失業問題が深刻になっている。完全失業率は最高記録をくりかえし、二〇〇一年一〇月ついに五・四%に達し、なお増加のすう勢である。職のある労働者も、その雇用形態はより不安定になっている。この事態にたいし、財界と政府はどのような対応をとっているのだろうか。その特徴をみていきたい。

財界・政府の「雇用対策」

 この事態のなかで、日経連は昨年八月の「緊急雇用対策プログラム」などいくつかの「雇用対策」をだしている。これを受けて政府も九月の「改革先行プログラム」や補正予算案、一〇月三一日に審議会に諮問され即日答申された「雇用対策臨時特例法」法案要綱などのなかで雇用対策と称する諸施策をうちだしている。以下、その特徴をみてみたい。

 その第一の特徴は、失業手当や失対事業など、直接失業者に補償する施策がきわめてとぼしいことだ。

 失業手当の延長・拡大の必要性は、もはやのっぴきならないものになっている。とくに長期失業者にとっては、職業訓練費や資格取得費はもちろん、職安への交通費や求職情報誌の購入費用なども節約せざるをえないというのが実感であり、失業でカネのないことが失業の長期化を生むという悪循環におちいっている。親の失業のため中退をよぎなくされた高校生・大学生もふえており、世代をこえて今後数十年間にわたり影響をおよぼさざるをえない事態となっている。

 しかし財界・政府は、給付基準の延長も対象拡大もいっさいうけつけていない。わずかに職業訓練をうけている人にかぎって制限付きで延長を認めたことと、廃業した自営業者などへの貸付制度新設(年利三%――企業への貸付には無利子や超低利のものがいくらでもあるにもかかわらず)ぐらいである。

 失対事業などの拡大も急務となっているが、この施策もきわめてとぼしい。政府は補正予算に「緊急地域雇用創出特別交付金」三五〇〇億円をいれたが、この額では焼け石に水であり、内容も臨時補助教員や交通違反の監視など限定されている。

 その一方で、企業への助成はひじょうにおおい。これが第二の特徴である。「雇用創出特別奨励金」は、ITなど戦略的重点分野企業の中高年新規雇用一人につき七〇万円、失業率五%以上の地域の企業にはおなじく三〇万円を助成する。また、特定企業の注文に応じた公費による「オーダーメード型の職業訓練」も計画されている。これらはまだしも間接的ながら「雇用対策」といえそうな施策であるが、とうていそうとはいえないものもたくさんある。たとえば、「トライアル雇用」は三カ月にかぎり若年失業者の試用に助成するもので、ていのいい短期雇用になることは目にみえている。「激変緩和」と称して解雇前に長期レイオフした企業に助成、グループ企業からの中高年解雇者を受けいれた企業にも助成するなど、むしろ首切りへの助成としかいえない施策もある。また、「民間活力の活用による職業紹介機能の充実」が今期補正予算の柱の一つとなっており、民間の職業紹介業者を利用した企業にも助成される。

 第三の特徴は、「雇用対策」の名のもとにいっそうの労働力移動の促進、派遣・有期契約など、より流動的な雇用への転換が意識的にはかられていることだ。それは、「改革先行プログラム」に典型的にあらわれている。そこでは、@労働者派遣業の大幅規制緩和、中高年の派遣期間上限を一年から三年に、派遣対象の製造業などへの拡大を検討、A有期労働契約の対象分野を大幅拡大、契約期間上限を三年から五年にすることを調査検討、B解雇基準の見直し、C裁量労働制への規制を抜本的緩和、D職業紹介業への規制も抜本的緩和、などがうたわれている。

 この背景には、日経連が九五年に発表した「新時代の『日本的経営』」いらいの一貫した方針がある。労働者を、@長期雇用の正社員 A専門的技術者の有期契約 Bパート・臨時雇用――の三つに分け、これまで中心だった@をほんの少数にしAとBを増やすというものである。

安心して働ける環境づくりが目的ではない雇用対策

 失業は当人にとって死活的であるとともに、深刻な社会問題でもある。人人が失業中の一日ごとに社会の生産活動には大きな欠損が生じるのであり、高失業率は不況に拍車をかけ社会的生産を阻害している。

 にもかかわらず、資本とその政府は有効な手だてをうとうとはせず、かえって労働を不安定化させ、したがって生産力を低下させる施策をおしすすめようとしている。なるほど政府は、「改革」の結果五三〇万人の雇用が生まれるといっているが、具体的根拠はなく、政府部内からでさえ「絵に書いたモチ」と酷評されており、よくいっても「願望」にすぎない。

 根本的な問題は、「雇用対策」の目的が、安心してはたらける環境を整備することでも、社会の生産活動を首尾よくまわらせることでもなく、資本に高利潤を確保させることになっていることである。そして、こうした「雇用対策」をささえているのが「構造改革」のイデオロギーであり、民間資本に高利潤を確保すれば(つまり、搾取を強化すれば)経済は発展するという信仰にほかならない。

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