『労働通信』2001年9月号
『労働通信』編集委員会は、本誌五月号で『変貌する現代資本主義とその歴史的運命』(施鳳江、王新農編著、土肥民雄訳)の出版プロジェクトをよびかけました。これは、一九九七年に中国の天津大学出版社から出版された『馬克思主義経済理論与当代資本主義(マルクス主義経済理論と現代資本主義)』の日本語版の出版をおおくの人人の協力をえて実現し、日本における現代資本主義の研究や国際的な共同研究の発展に寄与しようというものです。
編集委員会では現在、このプロジェクトを本格的にたちあげていくための準備作業として、『変貌する現代資本主義とその歴史的運命』の仮訳版を研究者や先進的活動家のみなさんに配布し、内容についての意見、感想や日本での出版にむけての意見、助言などをよせていただく活動をすすめています。編集委員会では、八月いっぱいをめどにおよせいただいた意見の第一次集約をおこない、それにもとづいてプロジェクトをたちあげていく方針です。その内容については九月以降、別途、みなさんにお知らせし、あらためてご協力をお願いする予定です。よろしくお願いします。
『変貌する現代資本主義とその歴史的運命』出版プロジェクト準備活動の一環として七月二〇日、京都在住の『労働通信』読者の手で『変貌する現代資本主義とその歴史的運命』仮訳版の学習・検討会がひらかれ、翻訳者の土肥民雄氏をまじえて懇談した。これは、今年の二月から継続してきた『レーニンと労働組合』京都学習会のなかで、『変貌する現代資本主義とその歴史的運命』仮訳版を集団的に討議する場がぜひほしいという要望がだされるなかで開催されたものである。
学習会では、はじめに編集委員会より、この本の研究対象が「マルクス主義経済理論を運用して、資本主義の経済制度を解析し、現代資本主義の本質をあばきだす」(本書の「前書き」より)ことにあることが提起された。
また、本プロジェクトをよびかけた背景と目的としては、こんにちの労働運動を発展させるためには、グローバル化やIT化など急速に変貌する現代資本主義を分析し、そのなかから労働者階級の対抗戦略をみちびきだしていかなければならないという声が先進的活動家や研究者のみなさんからおおくだされていること、もとより、現代資本主義の分析は、なによりも先進資本主義国の研究者や労働者が主体的にになわなければならない任務であり、本書の出版は、その活動を発展させるとともに、現代資本主義分析のための国際的な協力をうながし、こんにちの世界と日本の労働運動の発展に貢献することを目的としていることなどがあきらかにされた。
そして、本書の第九章を中心に本書の内容が紹介されたのち、討議にはいった。
参加者のなかからは、「以前からレーニンの帝国主義論の現代版のような本がないかと、いろいろと本屋などをさがしてきたが、なかなかみつからなかった。ようやくそういう本にであえた感じがする。体系的にまとめた本はなかなかない」、「株式会社などの所有形態や管理制度、社会保障制度などの分析をおこない、日本、アメリカ、ヨーロッパ諸国のそれぞれの経済モデルのちがいを分析しているところも興味深い」といった意見がだされた。おなじような意見は、仮訳版をよんだ活動家や研究者などからもだされている。とくに中国が開放・改革政策をすすめるなかで、「中国は社会主義の理想をすて、資本主義になってしまったのではないか」と考えてきた人人のなかから、中国の研究者がこうした現代資本主義を批判的に分析した本をだしていることに認識をあらたにしたといった感想がだされていることも報告された。
翻訳者の土肥氏からは、さいきんの中国の動向として、「昨年の北載河会議(中国共産党の重要政策を討議する会議)で江沢民主席が現代資本主義批判を全面的にすすめようとよびかけた。そのよびかけにこたえて、『労働通信』にも転載した中国共産党理論誌『求是』の現代資本主義批判の論文がでてきている。結党八〇周年前後の中国では、中国共産党の歴史を総括するとともに、社会主義を全面的にうちだしたキャンペーンが大大的にはられていた。これまでの開放・改革の過程では、あまり社会主義を前面にだしてこなかったが、いまはかわっている。中国が開放・改革二〇年で経済力をつけ、かなり自信を深めてきたのではないか。『変貌する現代資本主義とその歴史的運命』は、北載河会議以前にだされたもので、その意味で先駆的な役割をはたした著作だ」と、本書が中国で出版された背景についても説明された。
また、本書が、ケインズ主義やマネタリズム、サプライサイド経済学派、新制度学派など、西側の経済理論についてもふれるなど、経済専門書としての色彩もつよいことから、「労働者にとっては、この本を読みこなすのは困難がある」という率直な意見もだされた。そのため、集団的な学習会をひらいて、実際に経験していることとむすびつけながら、討議し、学習を深めていくことの重要性が強調された。
本書で第二次世界大戦後の「第三次科学技術革命」についてかなり体系的に展開している点については議論が沸騰した。参加者からは、「この章については、『合理化』反対闘争をたたかってきた経験から、『機械のためにクビを切られる』と一面的にとらえて抵抗を感じる面もある。科学技術自体は進歩的なものだが、資本主義のためにつかわれると労働者を犠牲にするという関係をハッキリさせる必要がある」、「原子力について礼賛しすぎているような叙述もあり、反原発のながれのなかで抵抗を感じる人もおおいだろうし、またこのことだけをとりあげて攻撃してくる人もいるかもしれない」といった意見がだされた。
この点については、「資本主義国のわれわれと社会主義国の著者では、問題のとりあげ方の視点がちがうのはあたりまえだ。第九章でのべているように、社会主義国は西側のすすんだ科学技術を導入し、まず経済力でまさらないと、資本主義にうちかつことができない。生産力を発展させることは人類社会の発展の法則に合致している。問題は、この本の出版、普及を一つのきっかけとして、日本の研究者、労働者が現代資本主義分析を深めることだ」といった意見がだされた。
七月二〇日の学習会は、時間的な制約もあって、本書の膨大な内容を全面的に討議、検討することはできなかったが、ひきつづき各人が学習をふかめ、今後の出版プロジェクトの成功のためにそれぞれ奮闘することを確認した。