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グローバル化が労働と生活に深刻な影響

『労働通信』2001年5月号

 

 10年間つづいてきたアメリカの経済成長が破たんし、日本においても株価の低落や不良債権問題がいちだんと深刻になっている。このなかで今年の「春闘」では、のきなみ低額回答や成果実績主義への移行がすすめられている。さらに今後、不良債権の処理や国際会計基準の導入などによりリストラや企業倒産がふえることは確実である。

低額回答と成果実績主義

 自動車産業の「春闘」では、企業の「業績」による格差が鮮明となった。大規模なリストラによって「業績」を回復させた日産が昨年を大幅に上まわる1000円のベアと5.2カ月分のベア満額回答で妥結したのにたいして、リコール問題で不振におちいっている三菱はベアゼロにおわり、希望退職の募集などリストラのさなかにあるマツダも昨年実績をしたまわった。

 NTTグループ八社と電力九社はいずれも二年連続でベアゼロという結果におわった。それぞれ、マイラインの導入や電力の規制緩和などによって企業間競争がいちだんと激化していることが背景となっている。

 造船重機では、昨年のベアゼロから今年はベア600円へと回復するなど、今年の「春闘」では若干の前進面もあった。しかし、全体としてみれば、4月4日に日経連がまとめた大手企業の妥結状況をみても、妥結した135社の平均賃上額(定昇含む)は6293円、率にして1.69%となり、昨年の6456円、2.24%を下回った。

 主要企業の三月期決算は連結ベースで四年ぶりの増収増益をあげており、「支払い能力」はあったはずである。しかし、企業の側はグローバル化のもとでの「競争力」を確保するために、ベースアップのみならず、定期昇給さえも廃止し、個個人の「成果・実績」にもとづいた賃金決定方式を導入し、「企業業績の向上分は一時金で還元する」という方向をつらぬこうとしている。

 公務員についても、人事院の「能力、実績等の評価・活用に関する研究会」が3月30日、人事管理に能力・実績主義を導入することをもとめる最終報告を提出している。

 4月以降、中小企業の労資は賃金交渉にはいっているが、全国中小企業団体中央会が3月28日に発表した調査では、2001年度中に賃上げを実施予定という企業は約4割で、3割は実施しないことを予定しているという。

 さらに昨年から今年にかけての社会保障制度の改悪によって、年金の支給開始年齢のひきのばしや老人医療への一割定率負担の導入、高齢者の介護保険料の満額徴収、雇用保険の保険料のひきあげや給付カットにより、労働者の生活はいちだんときびしくなろうとしている。

独占救済の緊急経済対策

 政府・与党は4月6日、3月に訪米した森首相の対米公約にもとづいて緊急経済対策をうちだした。その内容は、@不良債権の最終処理、A銀行が保有する株を一時的に買い上げる「株式買い上げ機構」の設立の二本柱である。

 第一の不良債権の処理のすすめかたとしては、これまで土地投機などによって不良債権をふくらませてきたゼネコンや大企業にたいしては、大リストラを強行することを条件にして借金の棒引きをするということである。経営が悪化している中小企業にたいしては情け容赦なく倒産させて、回収できるだけの債権を回収するというものである。首切り「合理化」や企業倒産によって失業者が増大することは必至である。他方、これらの不良債権の処理によってこうむった銀行の損失にたいしては七〇兆円もの公的資金(国民一人あたり約六〇万円もの税金)で穴埋めをしようとしている。

 第二の「株式買い上げ機構」とは、銀行が保有する株式を一時的に買い上げる「受け皿機関」で、国と銀行が出資して設立する。これは、銀行の自己資本比率を8%以上にすることを義務づけるBIS(国際決済銀行)規制にもとづくもので、銀行が保有している大量の株を買いあげ、この場合も損失がでたら税金で穴埋めしようというものである。

国際会計基準の導入

 さらに、今年の4月から企業の会計に国際会計基準が導入されようとしている。これは、各国の証券当局で構成される証券監督者国際機構できめられたものである。それは、アメリカ、日本、ヨーロッパなどの多国籍企業や投資家が国境をこえてたがいの国の証券市場に投資しやすくするためのものである。

 その特徴の第一は、グループ企業の連結決算をしなければならなくなることである。これまでの日本の会計基準では、親会社が赤字であっても、帳簿的に操作して赤字を子会社に転嫁し、親会社は黒字であると装うことができた。

 ところが、国際会計基準では、子会社も含めたグループ全体の連結決算をしなければならないので、赤字隠しができなくなる。赤字がでれば、株価が下がることになるので、もっと苛烈なリストラがやられることになる。

 第二は、これまでは土地や建物、株式などの資産の評価額が購入時の価格であったのにたいして、国際会計基準では時価評価になる。バブルのときに、高額な土地や建物を買った企業は、いまはその評価額がさがるので、かくされた不良債権がさらにでてくる可能性が高い。これもリストラや企業倒産を促進する要因となる。
 第三は、キャッシュフロー表(税引後営業利益+原価償却費?|?設備投資?|?正味運転資本増加額)をつくり、継続的にキャッシュフロー上の利益をあげることをもとめられることである。そのため、キャッシュフローの最初の項目である「税引後利益」をひきあげるためには、不況で売上をあげることができなければ、人減らしをするか、在庫の圧縮、過剰設備の廃棄をいそがなければならなくなる。

 いずれにせよ、企業はいままで以上にきびしい条件で国際競争に参入しなければならなくなるのである。

背景にあるグローバル化

 今年の「春闘」状況や規制緩和、リストラ「合理化」、政府の緊急経済対策や国際会計基準をみても、こんにちの資本主義のグローバル化が個個の労働者の生活やどんな小さな職場にも深刻な影響をあたえていることがあきらかとなっている。

 もとより資本主義は、うまれたときから地球全体の市場や生産を一つのメカニズムのなかにくみこんでいくというグローバル化の法則性をもっている。マルクス、エンゲルスの古典『共産党宣言』は、「ブルジョアジーは世界市場の開拓によって、すべての国国の生産および消費を国籍をこえたものにかたちづくった」と指摘している。
 こんにち、このグローバル化はIT(情報技術)を背景にしてかつてなかったほどに世界の経済や文化の一体化をすすめている。だが、それは帝国主義陣営とりわけアメリカ帝国主義の世界支配強化のために政策的にすすめられているところに重大な特徴がある。

 それは、1960年代以降、アメリカをはじめとする多国籍企業が、発展途上国を自国の工業製品の市場とし、また低賃金の労働力を搾取し、豊かな資源を安い価格で収奪する新植民地主義の支配をつよめたことが一つの出発点になっている。それは、世界的な規模での過剰生産恐慌から脱出するためのものであった。

 80年代にはいってからは、アメリカは、ぼうだいにふくらんだ自国の貿易赤字を穴うめするために、世界各国から資金をアメリカに流入させる政策をとった。だが、それだけではアメリカの対外債務がふくらむだけなので、その資金をさらに全世界に投資してそれ以上の収益をあげようとしてきた。そのために、発展途上国をふくめた金融の自由化をすすめてきたのである。それは、アメリカをはじめとする帝国主義が、世界の労働者、勤労人民を搾取、収奪して得たぼうだいな過剰資本を生産的な分野へ投資することができなくなり、証券や為替などの投機によって収益をあげようとする傾向をつよめたことをしめすものであった。

 90年代にはいってソ連、東欧圏が崩壊し資本主義市場にくみいれられたこと、そしてインターネットをはじめとする情報技術が急速に普及したことはグローバル化の傾向に拍車をかけた。ますますおおくの投機的なカネが瞬時に世界中をかけめぐり、実体経済の裏付けがない擬制経済、「カジノ経済」がうみだされた。こんにちでは、世界で100ドルのカネが動いたとすると、そのうち実体のある商品やサービスのために動くのはわずか1.5ドルで、のこりの98.5ドルは投機や投資のために動いたカネである。

 こうしたグローバル化とバブル経済は、資本主義の危機を先送りし、一時的な経済の活況をうみだしてきた。だが、もうけがなければさっと資金をひきあげる投機的な動きは九七〜九八年のアジア経済の危機のように世界資本主義経済の不安定化をもたらしている。日本はすでに一〇年前のバブル経済の崩壊にはじまりいまだに不況から脱出することができず、アメリカ経済の活況もついに昨年末破たんするにいたった。

 アメリカは、この危機を打開するために、いっそうのグローバル化によって日本をふくむ世界の市場をこじあけようとしている。日本やヨーロッパなどの独占資本もこのグローバル化を推進せざるをえず、そのなかで労働者の犠牲のうえにたって国際競争力を強化しようとしている。だが、それは資本主義の危機をいちだんとふかめずにはおかない。

 グローバル化は、世界的な規模でアメリカ、日本、ヨーロッパなどの「富める国」と発展途上国などの「貧しい国」との二極分化をおしひろげ、先進国の内部でも貧富の格差をひろげている。それは、労働者、勤労人民の消費購買力を低下させ、過剰生産危機をいちだんとふかめさせる一方で、国際的な規模でのグローバル化反対の階級闘争をひきおこさざるをえない。

労働者階級の対抗戦略を

 今「春闘」のなかでも、リストラ「合理化」や成果実績主義賃金の導入、社会保障制度の改悪などによって人人は当面の生活のみならず将来への不安を高めている。そして、その背景にあるグローバル化や規制緩和、IT革命、バブル経済の破たんなどの言葉をきくたびに、おおくの人人のなかでは「なぜ、こんなことになるのか」「もっとみんなが豊かになる経済システムはないのか」という率直かつ深刻な疑問や問題意識がうまれている。

 ひきつづき職場、生産点での資本と具体的なたたかいを基礎に産業的・地域的な共同闘争をすすめながら、急速に変貌する現代資本主義の分析をふかめ、これにかわる社会をめざす労働者階級の対抗戦略をつくりあげていくことがもとめられている。

 

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