『労働通信』2000年11月号
「IT革命」の波が運輸業界にもおしよせてきている。
航空業界や鉄道、船舶では通信衛星の利用や、コンピュータの利用はひじょうにすすんでいる。これらの機器を利用して、航空機や船舶の位置、運行状況、ダイヤの編成などがプログラムされ、運用されている。
これらの機器の利用がトラック、バス、タクシー業界にも利用されるようになってきた。 タクシーでは、数年前から、タクシー無線を利用した「ロケーションシステム」が運用されてきたが、現在では、コンピューターと衛星を利用したGPS(全地球測位システム)を利用して、タクシーの配車、運行状況、走行位置を容易に把握できるようになっている。
トラック業界のシステムは、GPSと携帯電話、インターネットを利用した情報処理の迅速化だ。
すでに大手の運送会社では、長距離便においてGPSを利用して、車両の位置をわりだし、道路の渋滞状況、到着時間、車両との情報交換を容易にできるようにしている。またパソコン端末、携帯電話を利用して、積荷の情報交換の処理の迅速化を進めている。
トラック業界は、積載率が47%しかなく、帰り荷の確保が急務となっている。この帰り荷の情報をパソコンや携帯電話におくり、運転手が判断して荷物をうけとるのである。
このシステムは一見便利なようにみえる。しかし、それは労働者の生活を直撃するものとなる。
トラックの運賃も運輸省にたいして事前に届け出る制度をとっている。たとえば東京〜大阪間が5万円というように、運賃が設定されているが、この情報処理システムを利用すると、設定された運賃の半分以下の額が提示される。それでも帰り荷なしの「空で帰るよりまし」なので仕事をうけざるをえない。こうして企業ベースでさえ採算のあわない仕事がおしつけられるのである。
運輸業界では、「IT革命」でますます「規制緩和」が進行することにまちがいはない。航空業界や鉄道、船舶でも人員削減と価格破壊が極限まで進行している。
「『IT革命』で雇用が増える」などと宣伝されているが、じっさい「IT革命」で増えるのは失業と貧困だけである。