『労働通信』2000年11月号
10年ちかく前の自動車産業の新車開発期間は、だいたいフルモデルチェンジ(全面改良)で4年、マイナーチェンジ(部分改良)で2年というのが定説とされてきた。
しかし、バブル経済崩壊以後、自動車市場はおちこみ、企業の合併・工場閉鎖などリストラ「合理化」がすすめられた。また、ひえこんだ市場の購買力をあおるために、各社そろって定説とされてきた開発期間を短縮し、新車をぞくぞくと投入しはじめた。
その開発期間の短縮に大きな力を発揮しているのがIT(情報技術)やコンピュータをつかった生産システムとされている。
その典型的なできごととして、圧倒的な投資力をほこるトヨタ自動車から発売された「カローラ」は、コンピュータ上で性能を解析し、試作車をつくらずに開発されている。
そのような動きは、わたしのはたらくM社でも同様であり、2004年までに自動車の試作前に乗りごこちや騒音などの各種試験をコンピュータ上で実施できるシステムを導入し、デザイン決定から量産開始までの開発期間を現在の18カ月から14カ月へと短縮し、開発投資の30%低減をはかるとされている。
また、部品についても、試作段階から特殊な部品や主要な部品をのぞき、部品会社に設計と製造の両方をさせている。そのため本社では、パソコン上での設計と製造部門の組立・特殊部品や主要部品の製造ぐらいだけになるのではないかといわれ、ITやパソコンなどによる革新的な産業構造の転換によりリストラ「合理化」はいちだんとすすむとされ、開発部門などでは「生き残りのためにどうするか」が死活的な問題となっている。
さらに新システムを補助する三次元設計システムを提携先の外資系自動車企業と同種のものに変更していく方針で、提携先とすすめる車両などの共同開発化の情報基盤として活用されていき、インターネットは国をこえ、生産上の密接な関係をつくり、より効率的な生産になり、世界的な統括生産システムが確立されていく。
しかし、ITやコンピュータが企業の利潤追求のために活用されていけば、その裏側で生産をになっているおおくの労働者の職場がうしなわれていくことになる。