| NTT労組 |
NTT労組組合員・松村 健一
『労働通信』2000年9月号
IT(情報技術)革命がさけばれ、世界の帝国主義の国運をかけた猛烈な争奪が展開されているなかで、NTT労働組合第三回定期全国大会が8月2〜3日の両日、横浜市で開催された。今年の定期大会は基軸大会であり、むこう二年間の方針を決定する大会であった。大会での主要な課題は、「春闘」総括とあわせ、資本のおしすすめる「中期事業計画」にたいするこの間のとりくみの総括と今後の方針であった。
昨年7月、NTTが持株会社の統括下に東・西地域会社と県間・国際通信を牛耳るコミュニケーションズの三事業会社に分割され、アジアを中心に全世界に本格的な侵略を開始して1年あまり、はやくも日米欧帝国主義の市場争奪をめぐる諸矛盾がふきだしている。
なかでも相互接続料金をめぐって日米両国は、当面のもっとも重要な課題として交渉をつづけているが、激変する情報通信技術はこれからの国家運命を左右する課題だけに利害が対立し、ますます矛盾が激化せざるをえない。また、政府、NTT独占資本は、アメリカ帝国主義をはじめとした内外独占資本の接続料金の大幅値下げ要求を利用して労働者に犠牲を転嫁し、搾取と収奪をつよめている。
一方のNTT労組中央本部の津田委員長も「成果主義を色こくとりいれ、賃金でハッキリ差をつける。内容はきびしいものになるが労組の使命は雇用をまもることが第一だ。人件費総体を減らし、通信料金の低廉化にも貢献する」と、今年2月「春闘」をまえに語っていた。
しかし、NTTの99年度の決算報告によると、営業収益がはじめて10兆円を突破し、純益も8000億円を上回るほどばくだいな利益をあげているのである。
第3回定期全国大会の議案書では、「春闘」総括をはじめ、中期事業計画(3カ年「合理化」計画)にたいするこの間のとりくみと、今後の方向をうちだしている。
それによると、NTT資本は「財務状況のきびしさ、日米交渉への影響などを理由にベアはゼロ、業績手当は廃止、特別手当は分離決着とし年間4カ月」と回答(現在は年間特別手当5.9カ月)した。労組中央は「きびしい情勢のなかでベアゼロなど苦渋の決断としてうけとめる」「組合員の期待と信頼をギリギリつなぎうる総体としての苦渋の決断」と結論づけ、その理由を東・西地域会社の財務状況・接続料金にかかわる日米交渉をあげ、「賃金のひきあげは結果として料金のひきさげ圧力を高め、東・西地域会社の財務状況を急激に悪化させ、雇用への影響を惹起(じゃっき)しかねない」として、資本の要求を丸のみした。
また、3カ年「合理化」計画にたいするこの間のとりくみでは、「あらたな発展と事業構造の転換との位置づけを柱に、トータルとしての雇用確保」をうちだし、「情報流通分野への流動および市場性のある大都市圏への流動など、グループ会社間の人員再配置をおこない、トータルとしての雇用確保をはかる」と4300人規模の出向と2万数千人規模の配転を労働組合が要求し、大都市圏への配転に応じられない労働者には否応なく生首をとばすことをほのめかしている。
新人事・賃金制度の確立では「年功的要素を縮小し、成果・業績を重視する賃金制度の確立をもとめる」と賃金差別を拡大し、労働者同士をいがみあわせ、人件費総体を削減して資本の要求に応じていく方向をうちだしている。
これがほんとうに働く者の代表者の考えることなのか? と耳をうたがいたくなるほどの反動ぶりである。権利と生活改善などあったものではない。
事業の「発展」と「雇用確保」のために定期昇給廃止のくりあげ、特別一時金(転進一時金制度)など諸手当の廃止や給付率のひきさげなど、はたらく者への支払いを極端に減らし、数千億円を拠出して帝国主義・独占資本に保証していく。これらが全国大会の骨子である。
各都府県支部の分会オルグなどでは本部批判がやつぎばやにだされ、答えることすらできない状況が各地でおこっている。労働者の要求の中心は「労働者の利益をまもって資本とたたかえ」「雇用をまもるためになにをしたのか」「労働者がたたかいとってきた権利・利益を売りわたすとはなにごとか」「自己批判しろ」「責任をとって辞めろ」などに代表されている。
職場では、情報流通営業のたちあげにむけ、あわただしく動いている。
昨年1月に組織編成し、7月に分割してわずか1年3カ月、ふたたび中期事業計画(3カ年「合理化」計画)にもとづく再編がこの10月にスタートする。
しかし、1〜2年後にはさらなる再編成が実施される。大阪では市内ゾーンを中心に五つのゾーンをもうけ、グループ企業の商品を中心に情報家電メーカーなどとのアライアンス(提携)で提供する商品をミックスして販売するなど「総合商社的営業」への転換が要求されている。
職場の動きは、出向・配転・職転などにあたって、管理者が労働者に個別に面談し、査定・評価している。90%以上の労働者はなんらかのかたちで異動する。
また、おおくの部門が廃止され、すべて営業部門に集約される。
さらには、数千人規模の労働者が地方から異動してくる。市場規模の小さい大阪で、労働者同士の売上をめぐるいがみあいはいっそう激しさをますことはあきらかである。
このため、売上のあがらない労働者は排除(クビ)されるが、なかでも中高年労働者は深刻である。
IT(情報技術)。このシステムのもとで、労働者の犠牲の強要と、犠牲を基礎にする成果能力主義への移行は、全産業にわたり急速に拡大している。これを全面的にささえているのが、NTT労組の方針である。この方向に労働者の抵抗と反発がうずまいている。おおくの労働者の要求を具体化し、労組の指導権を先進的労働者にうばいかえすことは、急務の課題である。