『労働通信』2000年9月号
子どもをもつ労働者にとって、子どもたちが放課後、親が帰るまでどうやってすごしているのか、これほど気がかりなことはない。友だちとなかよく遊んでいるか、ちゃんと勉強しているか、けがや病気をしていないか、犯罪にまきこまれてはいないか……。とくにともばたらきの家庭では深刻である。夏休みをどうのりきるかも、大きな課題だ。
大阪市東淀川区のA小学校の校区では、市が学校の教室を利用して、放課後の子どもたちの面倒をみる「いきいき活動」の充実をもとめて母親たちがたちあがった。そのメンバーのひとりであるBさん(専業主婦、43歳)にお話をうかがった。
| インタビュー |
――まず、「いきいき活動」というのは、どういうものですか?
放課後、学校内の多目的教室や運動場をつかって、子どもたちが遊んだり、勉強をやったりする活動のことです。学校の先生のOBや地域の主婦、学生などが指導員になっています。夏は午後六時まで、冬は五時半まであずかってもらえます。
さいきんの子どもたちは、むかしのように年齢がちがう子ども同士であそぶことがなくなったということで、年齢がちがう子ども同士の交流をはかるという目的で八年ほど前からスタートしました。運営しているのは、財団法人大阪市教育振興公社という大阪市の外郭団体です。
――「いきいき活動」に参加してみて、お子さんたちはどうですか?
ひとりっ子の娘は、家庭的な雰囲気の「いきいき」で年齢がちがう子ともお友だちになれ、指導員のかたがたとも自然体でお話ができるようになりました。長期休暇のあとも、思いでいっぱいのまま新学期をスタートでき、生活のリズムもむりなくもとにもどせました。
ほかのお母さんたちも、子どもがボール遊びや縄とび、鬼ごっこ、室内ゲームなどをして、思いっきり有意義な時間をすごしているといわれます。わがままな面がめだってきた子どもが、年下の子の気持ちを考えてあそんでやったり、友だちのおうちの事情も考えてあそべるようになったという話もききます。
それと、さいきんわたしの親が病気でたおれたのですが、娘が「いきいき」にいっているあいだは、わたしも安心して病院通いをすることができました。ほんとうにたすかっています。
――放課後の子どもたちのことで、いちばん心配なのはどういうことですか?
この四月に校区で、下校中の子どもを車につれこもうとする事件がおこりました。その後もにたような未遂事件がおこっています。子どもが殺されるような事件が続出するなかで、わたしたちの校区でも一歩まちがえればという事態がおこりうるのではないかと、ほんとうに心配です。
「知らない人に声をかけられても、ついていくな」というだけならいいけれども、「知らない人にあいさつされても、あいさつするな」といわざるをえないのはつらいところです。
かといって、家にじっととじこもって、ファミコンばかりをやっていると人格的におかしくなるんじゃないかと心配です。
世の中全体がおかしくなってきた感じです。とくに、両親ともはたらいておられる家庭は、毎日子どもの顔をみるまではほんとうに安心しておれないと思います。
――A小学校では、子どもたち全員が「いきいき活動」に参加しているのですか?
全員ではありません。約700人の児童のうち、100人強ぐらいが参加しています。毎年、春に希望者の募集があり、@子どもが参加を希望していること、A親が承認していること、B週に三日以上参加できること――を条件にしています。
それと問題なのは、うちの小学校では一年生から三年生までしか「いきいき」の対象にしていないことです。ほかの小学校では六年生までみてもらえるところもあるのですが、うちではマンモス校で、受け入れのキャパシティーがすくない、安全性が保障できないという理由で三年生までなんです。
また、「おじいちゃんやおばあちゃんが病気になったから」とか、「親がはたらきはじめたから」という理由で学年の途中から「いきいき」に参加させてほしいといっても受け入れてもらえないのです。「いきいき」は年齢のちがう子どもの交流が目的であり、あくまでも子ども主体だから、親や家庭の事情はみとめられないというのです。これも、ちょっと納得がいきませんね。
ついでにいうと、子どもを五時半ないし六時まであずかってもらう条件は、親が「お迎え」をするということです。くらくなってから子どもをひとりでかえすのはあぶないということで、「お迎え」ができない子どもは四時半で帰宅しなければなりません。仕事がおそくなる親はこの点でもこまります。
――そうしたなかで、親御さんたちが学校への要望をだしたわけですね。
五月に「いきいき」に子どもを通わせているお母さん方一八人ばかりがあつまって、いろいろと話しあいをしました。みんな主婦ですから、夕食後のみじかい時間をやりくりしてあつまりました。シングル・マザーとして、懸命に子育てをされているお母さんもいます。ただ、仕事で遅くなるお母さんたち――ほんとうは、「いきいき活動」の充実をもっとももとめている人たち――はこうしたあつまりにもなかなか参加できませんでした。
いろいろな意見がでましたが、わたしたちなりに要望をまとめ、考え方を整理しました。
要望としては、なによりも「いきいき」を六年生まで対象とすること。当面は、せめて夏休みだけでも受け入れ態勢をつくってほしいということでした。
その理由としては、つぎの四つの点をあげました。
こういった要望をだして、今回、夏休みにかぎって四年生まで受け入れてもらえることになりました。
まだまだ不十分ですが、今後は来年度にむけて六年生までの受け入れ態勢を作ることを目標に、親御さんたちや先生たちとも話しあいながら運動を広げていきたいと思います。
――どうもありがとうございました。
子どもたちがいつ犯罪にまきこまれてもおかしくない社会環境。日が暮れるまであそびほうけていたわたしたちの子どものころからは想像もできない事態となっている。
その背景には、失業、リストラや競争の激化によって、わかものが未来に展望をもてなくなっている社会、低賃金とサービス残業をしいられる職場、家事・育児と社会的労働の二重の負担をしいられる婦人労働者の問題など、いく重にもかさなった現代の資本主義の縮図があらわれている。これは、子どもの教育や婦人の問題であるだけでなく、現代の労働問題であり、労働運動の課題としてしんけんにとりくまなければならない問題であると感じた。
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