『労働通信』2000年7月号
東海地方・電機産業労働者 篠田明
世間では、不況だ、不況だとさけばれているが、わたしの工場では「過去最高」の生産で、アルバイトを大量に導入しフル生産しても生産が間にあわない状況である。もちろん下請けや関連会社もフル生産しているが供給できず、ラインがとまることもある。
この好況の背景には、ヨーロッパへの輸出の伸びが大きな比重を占めている。ヨーロッパは、環境問題で製品の買いかえがあるといわれている。また、2000年祭による一時的な活況をみせているともいわれており、かつてなくヨーロッパを中心とした海外輸出によって工場は、すごくいそがしい状況である。もちろんこれは一時的なことであると思うが。
こんにちでは、企業は世界史的視野で生産や部品調達を展開している。一時的な活況をみせている地域であれば世界のどこでも売りこんでいく体制をととのえている。そのために企業の体質を強化するため構造改革をすすめている。製品も国際規格をクリアーするのはもちろんのこと、工場自体がISOの国際規格の生産や品質、環境問題などの資格をとり、国際市場へのりだすためこれまで準備をすすめてきた。こんどはそれをさらに一歩すすめて、機械やラインの故障やトラブルによる「ミスゼロ」をめざしたTPM管理工場の認可をとろうとしている。これがこんにち「グローバル化」しているといわれる工場の具体的な内容である。
いまや国際市場をめぐり市場争奪が激烈に展開されている。それにうちかつものが市場を獲得し生産を拡大するという構図があらわれているように思う。
しかしその犠牲は,すべて労働者にくるということである。いろんな資格をとることを要求されたり、ごみの分別や、機械保全のための活動などほんらいの仕事以外の仕事がふえている。しかし、一番の問題は,賃金問題である。この間、赤字宣伝により、大幅な賃さげがおこなわれた。一時金では,年間20万円あまりさげられた。今年は,あがっても昨年よりは低かった。国際競争では国際規格が重要なことであるがコストの低さがやはり決定的である。そのため企業は「これ以上賃あげをすると,国際競争力がなくる」といって賃金を低くおさえこんできている。いまは長時間残業で手当があるため不満はおさえこまれているが、すぐに残業がなくなり低賃金になることは時間の問題である。
いまから労働者の力をたばねていく方向を準備していくことが重要だ。どうすれば労働者が団結することができるのか、いま労働運動に問われている。
近畿地方・電機産業労働者 野村幸子
わたしのつとめているS会社は、独占大手金属会社の一事業所として12年前にパソコンや携帯電話、ゲーム機の部品製造会社として設立された。
この12年で売り上げ年商200億円、利益80億円(利益率40%)とO県のなかでもまたT地方管内でも、資本をバックにトップクラスにのしあがり、会社は、「この分野では世界一」と豪語している。
そして、他産業の不況のなかで、今後20%の高成長がみこまれるとして、四年以内に生産を150%アップさせるため、この7月に新工場を完成させる。そのため、本社からの役付きや学卒正社員の転勤もおおいし、低賃金・無権利の非正規労働者が毎日のようにやといいれられ、目まぐるしいばかりである。
きょうも会社は従業員に期間社員募集のためのビラをくばっている。
この2〜3年で500人増員し、2000人規模にするらしい。
しかし現在、正社員は全従業者の20数%でしかなく、80%ちかくが派遣社員、期間社員、準社員(ロングパート)、パート、アルバイトの非正規社員でしめる。こんごは、さらに派遣社員の割合を高め、全従業員の50%ちかくにするという。
20%の正社員は非鉄金属労連に所属しているが、80%の労働者は複雑な雇用関係をしいられ、未組織状態におかれている。
この組合は自他ともにみとめる御用組合で、組合員であるおおくの正社員は、未組織労働者の上にたち監督する立場に位置する。賃金、労働条件も数段上になっており、このような条件から未組織労働者をみくだす考え方もつよい。
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未組織の労働者はいつでも首を切られる状態にある。
2〜3カ月生産をおとすと会社方針で決まれば、真っ先に派遣社員から余剰人員としてやめさせられる。
また5年間、まじめな人間とまわりのものが一様にみとめて、はたらいてきた期間社員の青年が、「今回は契約しない」のひとことで、「はたらきたいなら派遣社員ではたらけ」といわれ、やめていった。
高校卒業したばかりの期間工が、採用主任からその場で自己退職届を書かされてやめていった。主任を下からにらめつけながらである。
すこし休みがおおいと「職安であたらしいところをみつけてこい! といってやった」と作業長クラスが大きな声で平気でいってはばからない。
またここさいきん、労働者にたいするしめつけがひどくなっている。
出勤カードのとおしわすれを色つきの大きな紙にはりだされた。
その労働者は、早出や残業をしたにもかかわらず、文句をいうとなにかいわれるから、みすみすただばたらきにさせられている。
21歳の期間工が食堂にジュースを買いにいった帰り、いそいで階段をかけのぼって、すべってけがをした。すると、所属部長命令で、全所属従業員が自筆で「私は会社の規則をまもり、廊下を飛んだり走ったりしません。規則に違反した場合はどんな処罰も受けます」という誓約書を有無もなく書かされる等等。
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しかし、泣き寝入りしないとがんばる労働婦人もいる。
去年11月に準社員ではいってきた32歳になる独身の婦人が、はいってしばらくしてカゼをひき、家族も具合がわるくなったことですこし休みがつづいた。遅刻も2〜3回あったというが、始業時間五分前の体操に間にあわなかったため。作業長からにらまれて、休みがおおい、仕事態度が悪いといんねんをつけられ、何度か「やめてもらう」といわれていた。こんどついに作業長から自己退職届の紙を突きつけられ、その場で書けとおどされたという。婦人はおどろいたが、「あなたと契約しているのではない。会社と契約しているので、会社として文書で解雇通知をください」とたたかった。
休みがおおいというが、80%以上の出勤率はあり、就業規則からみても違反はない。会社は突っこまれると解雇する理由がない。おおやけにされるとたいへんこまるのである。作業長は、いままでおおくの婦人をおどしてやめさせてきたのであろうが、「文書」という反撃におどろいてひっこめたという。その婦人はおどかされた証拠として作業長がとりもどそうとした「自己退職届」をとってきたとみせてくれた。
また、長年つとめてきた二人の準社員がいる。彼女たちは「仕事をしない」「恐い」「横着だ」とのレッテルをはられつづけてきた。その彼女たちが作業長に怒りをぶっつけた。そこには、つぎのようないままで積もり積もった怒りがあった。
正月休みのつづきに1〜2日の有給をとった。彼女たちからすれば女手一つで子供を育てており、つねひごろ親兄弟に迷惑をかけている。ひごろやれないことをやっておかなければという思いの有給である。
しかし正月があけてでてきたら、「有給は受理しない。○○まで出頭せよ!」と赤字のメモ紙がおかれていた。「出頭とはなにごとか、なにか罪でもおかしたというのか」「有給をみとめないというのなら、はじめからいうべきで、間にあわなかったら電話でもしてきて話しあいがあってしかるべき」とこのような権力的なやり方に憤まんやりかたない。
また、「今回たったの時給10円の賃あげを会社がきめたそうだが、そんな連絡さえもこない。このようなことはいくらでもあり、すべてにおいて無視されつづけている」「パートさん、パートさんというが、ちょっとした社員よりよっぽど仕事はしている。それよりなによりも自分たちには名前がある」「わたしたちはだまってやってきた。生活がかかっているからやってきた。女手一つで子供を育てることはなみたいていではない。ナヨナヨと生きていくことなどできやしない。人にうしろ指さされないように一生懸命いきてきた。わたしたちのような弱い立場のものを馬鹿にして人の尊厳をみくだすそのような態度は許さない」と一事が万事こういう態度で接する会社や上司にたいする怒りであった。
これらのたたかいのなかで、仕事の量や段取りは作業長が責任をもってやる。ミーティングにもでてもらう。会社の伝達や、賃金のことなども責任をもって会社側が伝達すると約束させた。
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しかしこれらはバラバラのたたかいで、おおくの労働者には知らされていない。
差別と分断のまかりとおっている現在の状況では未組織労働者は資本のなすがままである。
なにかことがあった場合、かならず未組織の労働者の口からでるのは「組合がないから好きにやられる」「組合があったらここまでむちゃはされない」「自分たちはつかいすての雑巾、人間として扱われない」という言葉である。
しかし組織された労働者とて「組合はあってなきがごとし」である。
以前、四直三交替であったが、いま三直二交替になってしまった。
さいしょはいそがしいから一時的なものと思っていた。ところが、組合からアンケートがくばられ反対の集約がでたつぎの日に、組合のほうから三直二交替の一二時間連続勤務でやっていくとなった。夜勤勤務は寿命が4〜5年ちぢむという。命をけずってはたらかねばならない。
いったいなんのためのアンケートだったのか、なんのための組合か、いまにはじまったことではないが組合は会社の組合、自分たちの組合ではないとはっきりいう。
このような状況を、組織労働者も未組織の労働者も、なんとかかえていけないものかと思っている。下部の組織されている労働者のなかで、自分たちの要求をとりいれ会社とたたかう組合にするために、また未組織の労働者のなかで、なにごとも団結して組織的にたたかうことができるように、そして正規社員も非正規社員もなくいっしょになってたたかえる未来の日のために、いまは先進層をみつけだす活動を手さぐりであるがとりくみたいと思っている。