『労働通信』2000年7月号
国鉄の「分割・民営化」によって解雇された1047人の国鉄労働者の解雇撤回闘争は、与党三党と社民党との「解決案」をめぐって重要な岐路にたたされている。
1047人のJR不採用問題で5月30日、自民党などの与党三党と社民党が会談し、問題の解決にむけた基本的枠組みについて、つぎのように合意した。
- 与党三党と社民党は、人道的観点から以下の枠組みで解決のために努力することを確認する。
- 国労が、JRに法的責任がないことを認め、全国大会(臨時)で決定する。
- 国労の全国大会決定をうけて「雇用」「訴訟とりさげ」「和解金」の三項目について以下の手順で実施する。
- 与党からJR各社にたいし、国労の各エリア本部などとの話しあいを開始し、人道的観点から国労組合員の雇用の場の確保を検討してほしい旨の要請をおこなう。
- 社民党から国労にたいし、すくなくともJR発足時における国鉄改革関連の訴訟について、全国大会での決定後、すみやかにとりさげるようもとめる。
- 与党と社民党のあいだで、和解金の位置づけ、額、支払い手続きなどについて検討をおこなう。
- 与党および社民党は、上記方針にもとづき、本問題の解決にむけ、おたがいに協力していく。
1987年4月1日に中曽根政府は、国鉄の「分割・民営化」をおこなった。当時は「労働者がはたらかないから赤字になった」といった宣伝が強力におこなわれ、労働条件の低下や既得権の剥奪がつづいたが、それは20万人もの人員削減を計画し、すすめていくための一環であった。そのもとで国鉄改革法がつくられた。なかでも改革法23条については国鉄労働者全員をいったん解雇し、そのなかから選別してJRに採用する手法をとるものであった。
「分割・民営化」に反対した国労や全動労(現在の建交労)に所属する労働者が大量に枠からはずされて、「国鉄清算事業団」におしやられ、また、ほんらいの輸送業務の職をうばわれた。その間、先の不安や当局の恫喝などで200人ちかくの自殺者をだした。3年後、最終的に1047人が再度首をきられ、家族ともどもアルバイトなどをしながら解雇撤回闘争をとりくんできた。
とくに国労は各都道府県の地方労働委員会にたいして、「国労組合員がJRに採用されなかったのは不当労働行為である」として申したてをおこなってきた。これにたいして各地労委はいずれも「不当労働行為の責任はJRにある」ことをみとめ、労働者を「分割・民営化」時点にさかのぼって採用すべきだとする救済命令をだした。
ところがJR各社は「使用者責任はない」としてことごとく労働委員会を無視し、裁判にもちこんできた。97年5月におこなわれた裁判では、裁判所が「本件の紛争について早期に抜本的な解決をはかるべき時期にきている」として原告JR各社と国労に和解をすすめるにいたったがJRは拒否し、「国鉄とJRは別法人であって国鉄のおこなったことの責任はJRにはない」とくりかえし、裁判での決着をつけるかまえをつづけた。
このようななかで昨年、国労の主張を認めるILO中間勧告が日本政府にだされ、政府・JR会社側を追いつめてきた。だが今回、「政治の場で不採用事件の解決をはかる」ために政党間の折衝がおこなわれて前記の合意にいたった。
それは、解雇された組合員の再雇用の前提条件として「不採用問題でJRに法的責任がないことを国労臨時全国大会で決定し、訴訟をとりさげる」ことをもとめている。国労組合員というだけでいいしれぬ苦難をしいたJRの「罪」はなかったと組合員にみとめさせろというのである。これにたいして反発感があるのもとうぜんであるが、国労中央本部は「最後のチャンス」として合意案を了承した。
5月30日の商業新聞報道を契機に全国の支部、闘争団、支援労組などから要望書や意見書、それに抗議文が中央本部執行委員会あてに送付されている。
13年前に国鉄、JR側がおこなった不当な首切りにたいして、長期間のたたかいをささえてきたのは、階級的な怒りとともに、全国にいるなかまと支援者の共同のたたかいを統括する国鉄労働組合が存在しているからであった。今回その信頼を裏切る行為が現場を無視してなされたことにかぎりない失望感がそれぞれの文面にあらわされている。
「いっさいの下部討議もなく、正式な機関手続きもふまずにすすめられ、水面下のやりとりの結果を唐突にマスコミ発表した」ことにたいする驚きと怒りを一様にあらわしている。そして、「13年間JRにたいし不当労働行為の責任を追及してきたたたかいの基本を無視し、おおくの労働者とその家族がめざした『解雇撤回・地元JR復帰』とはかけはなれた今回の『解決案』は認めるわけにはいかない」と記述している。 その「解決案」にたいして、「『JRに法的責任がないことを大会で決定する』こと、訴訟をとりさげるようにもとめていることは、国鉄闘争の全面降伏であり、われわれ闘争団の武装解除である。国労に一方的に譲歩をせまるものでしかない。『JRに法的責任がない』ことをみとめてどうしてJRにもどれる保証がえられるのか」として本部のあせりを警戒している。
また、与党三党と社民党との「合意」は、闘争団の要求している「JRの採用差別事件の責任をあきらかにし、国労組合員の名誉を回復することと、解雇を撤回するということ」にはつながるものでなく、中央本部がこれを受け入れた真意をうたがっている。
とくに重要なところとして、「昨年11月にILOが勧告したように『当該労働者の公正な補償と満足のいく解決に早急に到達するよう、JRと申立組合間の交渉を政府が積極的に奨励するよう』国労の主張を支持した。いまこそ自信をもってつよく政府にせまることが必要なのに、この『合意』は犯罪者のJR側の主張が全面的にだされた中味であり、本末転倒である。ながく、くるしいたたかいをとおしてかちとった労働委員会の救済命令とともに、ILO勧告を無にせず、組合員の納得のいくかたちの解決」をもとめている。
意見書のおおくは、こんにちJR方式の首切りが全産業的に採用され「解雇自由」の風潮が拡大しているとして、国鉄闘争は国労だけのものではないと指摘している。こうした情勢のなかで、国鉄闘争はリストラ「合理化」にくるしめられている勤労者のたたかいに大きな影響をあたえ、日本の労働運動の再生をめざしてきたことを誇りとしている。その意味からも安易な「合意」の受け入れに抗議し、撤回することを中央本部執行部に要求しているのである。
7月1日に予定されている臨時大会では、これまでの経過を再度全体で論議し、組合員本意の決議決定をおこない、より強い組合員と家族の団結がはたされるようのぞみたい。
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