『労働通信』2000年5月号
2000年「春闘」は、ベア・ゼロ回答がつづくなど、きびしい結果となっている。だが、このなかでも、まだ規模はちいさいが現場から労働者の要求をになった闘争がとりくまれている。このたたかいを基礎に、労働運動再建の基盤をつよめていくことが重要となっている。
京都府・郵便労働者
2000年「春闘」をたたかうために、わが支部は、年間執行方針にもとづいて「春闘あさビラ」行動を執行委員会で決定した。期間は二週間として、3月6日から19日まで設定し、3月12日(日)には取組の一環として郵政行革と全逓運動を柱とする支部学習交流会をおこなうこともあわせて確認した。
今回で5年目となる「春闘あさビラ」行動は、担当役員などの「一手請け負い」を今年はやめて、教宣部と編集委員メンバーおよび全執行委員と各分会役員で手分けして「あさビラ」原稿を書くこととした。
支部教宣部長が原稿を回収し、各分会(京都N局分会・M局分会・U局分会)の教宣部と分会長と編集委員があつまって原稿をチェックし、毎朝局門前配布を開始した。原稿は、M分会2本、U分会6本、部長2本と、合計9人が作成した。ビラの内容は、つぎのようなものだ。
どれも、矛盾があふれる労働現場の実態とはたらく人人の声をたっぷりのせたものである。
配布活動も昨年までとちがい、郵便分会、集配分会、貯金保険分会のそれぞれの組合員と地区本部の参加もえて最後までおこなえた。
このような動きになったのも、「『春闘』期間中になにかの行動をやろう」というよびかけにみんながこたえてくれたからであった。
支部長を先頭に毎日、すくないときで四人、おおいときでは九人、平均五〜六人が門前にたって出勤してきた人たちにビラをわたした。当局の管理者に「玄関でビラをまくな」とけちらされながらもビラをまき、雨のときも傘をさして配布した。
支部・分会一体で組合員にはたらきかけて、のべ57人が配布行動に参加した。うれしいことにN局分会では他分会からの応援もあった。これらの総括会議も予定している。
そしてこの期間中に支部学習交流会をもち、22人が参加した。感想文も4人だしてくれている。全逓京都地区本部の「春闘連続講座」にも一般組合員が10人参加した。
今回の取組でいえることは、
このすべては労働組合という組織があってこそがんばれることがよくわかった、ということである。
山口県・ゴム産業労働者
「春闘」回答指定日の翌日、「金額提示されず。本日(3月17日)ひきつづき交渉」という朝ビラ号外が門前でくばられた。しかし、その日の午後、「ベア・定昇みおくり、夏季一時金は5月に再交渉で合意。会社より総額人件費10%削減を申しいれされる」の半ビラ号外を職場委員が配布したので、みんなの目が「点」になった。いそぎ足でトイレにいきながらビラをみる人。ひごろなら「菓子器」になってしまうビラが、今回はまずは「なに、これ? 総額人件費ってどういう意味?」という声がすぐにでてきたので、みんなじっくり読んだようだ。
会社からの「申しいれ」から組合本部と会社との「合意(案)」がでてくるまでの約1カ月間、各支部、各ブロック、各委員会ではいままでになく思っていることがオープンにだされた。全支部からでた「組合員の怒りの声」や「つっこんだ意見」はA4用紙10ページにわたってぎっしり印刷され、全組合員に配布された。組合活動をする機会があまりないある婦人労働者は、「小説ならいつも途中でねてしまうけど、今回ほど必死で組合の速報を読んだことはない。どこの支部もみんないい意見をだしているし、わたしがひごろ思っていたこととおなじだったので安心した。組合もすてたもんじゃないと思った」と、なかまのパワーに勇気づけられた様子だった。
非組合員である管理職からも、会社からの情報があまりはいらないためか、労働組合の動きに注目し、「いまどうなっちょるんか」という質問がでるという状況だった。
なんせ「総額人件費10%削減」だからだ。今回はだれしもが他人事ではおれない状況におかれた。
ふりかえれば3月21日、「昼休みに集会所にて全員集会」の速報がくばられ、12時のチャイムがなると、各職場から組合員が集会所(食堂)にひごろになくはやく集合した。本部委員長より30分間、今回の「申しいれ」の内容と「執行部見解・方針(案)」の説明があった。
「3期連続赤字をだせばあぶないといわれている」「はやい時期にわかっていれば、春闘要求はしなかった」とか、「決算発表は連結決算が前面にでるため」「国際会計基準のからみがある」「3月21日までに土地評価法を活用したいため」とか、現場ではたらくものにはチンプンカンプンの専門用語がとびだし、何千万円、何億円という金額の数字がならべたてられた。経理専門の事務担当者は、「いっていることは理解できるが、基本給のカットの理由づけにするのはまちがっている」と自信をもって意見をいっていたが、ほとんどの労働者は「あれだけのぼうだいな資料を短時間で討議してもわかるわけがない」といい、「あぶない、あぶないといわれれば、退職金や給料のカットはしかたがないと思うようになる」と不安感をいだいていた。各支部は本部オルグのあと、職場委員会、職場常会を何回もひらき、組合員の意見を集約した。
3月期決算でいちばんいそがしい時期であり、考える余裕がなく他人まかせにしたい人もおおいはずである。しかし、みんな有珠山のように噴火していたのである。
「人件費の削減だけで具体的な政策がない」「エリア職とか一般職とかいうが、ていのいい生産部門の賃金カットだ。根拠が希薄で納得いかない」「業績の悪化を組合員の責任にしてほしくない」「ボランティアで仕事をしろというのか」「アルバイトをしないと生活できない」「ぜったい妥協するな」「合意するな」等等の怒りがふきでた。なかには、労働者と会社役員との関係、労働者と株主の関係、労働者と銀行との関係を「なるほど」と思うように整然と説明する労働者もいた。ひさびさの議論白熱で、発言があるたびに委員の目が右に左に動き、しんけんそのものだった。
4月にはいり、中央執行委員会がひらかれた。職場討議の結果をふまえて「本部まとめ」をおこない、「方針(案)」の一部が修正された。また反対意見もおおいことから、4月22日に臨時大会をひらき、「最終合意(案)」の賛否を問うことを決定した。その内容は、いろいろあるが、賃金面では基本給の5%ダウン、退職金の10%ダウン、退職加算金240万円を150万円に減額……などである。
臨時大会へむけて、ふたたび職場討議がおこなわれた。
「これは会社が人のさいふに手をつっこんでカネをぬすむのとおなじだ」「この合意(案)では生活できない。むちゃだ」「物流の全国四基地の完成……とあるが、その資金をつくるための賃金カットなのか」「大会で賛否をとるときは○×でやるべきだ」と、最後の最後まで「合意(案)」への批判の声があがっていた。このたびばかりは、なにか「しかたない」というよりは、「考えれば考えるほど腹がたつ」「長年はたらいて、この仕打ちとはばかにしている」という声がおおくでた。
この間、昼休みや通勤途中、スーパーや喫茶店、花見の席でも「総額人件費10%削減」の話でもちきりだった。そのなかで、「どこの会社でもおなじことがやられている」「このままだまっておれば、消費税といっしょで3%が5%、10%とになる」「世の中、くるところまできている」と自分たちの経験をとおして認識を高めてきた。
そして、つくってもものが売れない過剰生産の現実のなかで、日本ではみせかけの「売上」がたつ返品制度があり、そのことが問題になりはじめてから急速にものごとがはっきりとしてくることも勉強した。
いまや計画生産でなりたつ社会をきずき、衣食住で心配したり、いのちをうばいあうことがなく、文化的でゆたかにくらせることをのぞむことはけっしてぜいたくなことではない。それができる富はすでにわたしたち労働者がつくっている。いま、わたしはそれを自覚して追求すれば、「最後にわらうものはわれわれだ」という気分になっている。
山口県・生協パート労働者
わたしは生活協同組合でパートの事務職としてはたらいています。パートといえども、いまやどこでもそうであるように時間が正規職員よりみじかいことと給与が極端に低いだけで、仕事は一人前に要求されます。しかし生協のおもしろいところは、正規とパートがいっしょに一つの組合を構成しているところです。
全国の生協の正規職員数は約3万9300人でパートは9万5300人と、約2.4倍もいます。そしてこのすうせいは人件費抑制攻撃のなかでますますつよまろうとしています。このうち正規職員はほとんどが生協労連に結集しており、パートは約4万5300人と約47%の組織率です。それでも人数のうえでは正規職員よりおおいのです。この組織力をつかって全国の生協のパートの役員たちは、自分の組織の組織率のアップと地域でのパート労働者の組織化をはかろうとしています。
生協ではたらくパートのほとんどは主婦出身であり生協組合員である人がおおいのですが、そのおばさんたちのパワーはすごいものがあり、倒産しかかった生協のたてなおしのために「生協の火を消すな」と労苦をいとわず走りまわっている活動ぶりには、頭のさがるものがあります。また地域のパート労働者の組織化と時間給の底あげをめざして、総対話運動や最低賃金をきめる地域最賃審議会の委員への立候補などもおこなっています。
しかし今「春闘」は、そのようながんばりだけではのりきれないような深刻な事態が進行しています。「春闘」の統一回答指定日であった3月15日を中心に各単組に回答がだされましたが、そのほとんどが「定昇のみ」「ベアゼロ」であり、なかには「定昇凍結」「賃さげ」もでています。ベアがでている単組は正規でわずか100円、パートで一円玉1〜2枚程度というものです。また夏季一時金の回答も前年月数を下まわる回答がだされています。この回答は全国の労組のなかでも水準・内容とも異常なものであるとして、生協労連中央執行委員会はアピールや声明をだして各単組へたたかいの強化をよびかけています。
また今「春闘」では能力給の導入を画策しているのも、もう一つの特徴です。ある単組では一時金について、あらかじめ労働分配率をきめておいて、それに荒利益率をかけたものを固定賞与部分とし、のこりを成果配分にするというようなことが考えられています。
このような攻撃にたいして、生協労連は生協経営を悪化させている根本原因が、消費購買力をおちこませている構造不況にあるとして国政の改革と生協の非民主的経営の改革を訴えています。生協のスローガンである「一人は万人のために、万人は一人のために」が実行できるような社会とは、いったいどういう社会なのかを現実的に考えていかなくてはいけない時代にきているのではないかとわたしは思います。
運動の主体は、あくまで現場ではたらく正規職員とパートにあります。「パートにも組合がある」と純粋によろこんで結集する中高年の婦人労働者にたいして「賃金とはなにか」「搾取とはなにか」等の理論問題もふくめた情宣活動がいまとても重要だと痛感しています。
大阪府・清掃労働者
わたしの職場(自治体から清掃業務の委託をうけている民間清掃会社、従業員約40人、組合は未結成)では、昨年の九月に会社側から「新人事制度」なるものがうちだされた。会社は地域の「労務協会」のS氏をまねきいれ、「人事考課システム」と成果・実績主義の賃金制度を導入することを提案させた。そして、この「新人事制度」を労働者の「合意」のうえで導入するかたちをつくるために、労働者代表3人をまじえた「プロジェクト会議」を設置することを提案してきた。
この「プロジェクト会議」に参加するかどうかをめぐって、労働者のなかでは意見がわかれたが、相談の結果、とりあえず「プロジェクト会議」に参加してみんなの声をぶつけてたたかおうという結論になり、わたしをふくめ3人が参加することとなった。(これまでの経過は『労働通信』の1月号参照)
その後、どうなったのか。
今年にはいって会社側と労務協会のS氏は、「仕事調べ」(各人の仕事の内容を調査)なるものを全社員におしつけてきた。これには反発がおおかったが、結局みな提出した。
2月18日、4回目の「プロジェクト会議」がおこなわれた。今回の会議では、職能資格制度完成までの流れなどについて、労務士S氏から説明があった。
説明のあと、質問をうけつけたが、3人の労働者代表のうち1人は終始、沈黙したままであった。べつの1人は「わかいもんはいろんなことをやりたいと思っている」と「新人事制度」に賛意をしめした。
わたしは、この人事制度が地域の自治体の下請け清掃業者にはどこにも導入されていないことをあげ、なんでうちでやるのか理由を聞いた。
労務士いわく、「この会社は時代の先端をいっているんだ。さいわい若社長は柔軟だし」といった。
わたしは「この趣旨とかいうものはわかるがこれが、賃金にはねかえることはどうか?」といった。
労務士いわく「ソ連をみなさい。平等にすると、みなはたらかなくなるでしょう」といってのけた。
わたしは、有給や休みのことを主張したが、労務士は「休みをとるにも段取りが必要でしょう」と話を先送りし、なにがなんでも「人事制度」を導入して、これをプロジェクトのメンバーにのませようとした。
わたしは、「よくいわれることだが、会社あっての従業員、従業員あっての会社というが、うちの会社は、従業員あっての会社というのがないのではないか。それに会社はわれわれに意識改革をいっているが会社の意識はかわっていないじゃないか。この会社をここまでにしたのは会社の努力もあったでしょうが、ながいあいだはたらいてきた人の貢献もあるでしょう」といったが、ぜんぜん無視された。
後日、職場の『労働通信』の読者があつまり、話しあいをもった。
話は、人事制度のねらいと職場の実際についておこなわれた。この人事制度のねらいについては、結局のところ市の委託費と産業廃棄物の売上は決まっているので、いくらわれわれが血眼になってはたらいても会社の収入が増えることはないし、人事制度を導入するねらいは、労働者同士をばらばらに仲たがいさせ、給料でも、あがる人の分を他の人からけずり、会社の腹をすこしもいためず、会社に忠実な人間をつくっていくし、反抗的な労働者はやめさせていこうという凶悪なねらいをもっていることがあきらかになった。
また読者以外の労働者の意見もつかんでいる範囲でだされた。そのほとんどは、会社の実態に人事制度があっていないこと(清掃業務に能力主義など関係ない)、プロジェクトはかざりで実際は会社の思いどおりにしたいだけであると、みぬいていることがあきらかにされた。
とくに会社がわれわれの当然の権利である有給休暇などについてあいまいな態度でのらりくらりとにげていることに読者の怒りは集中した。
話しあいでは、この人事制度の背景についてまでは深められなかったが、はじめて読者があつまり、それぞれの意見をだしあったことは意義ぶかいものがあった。また今後、どのように人事制度に反対していくかについて、労働組合の結成などもふくめて具体的な結論はでなかったが、みんなの団結とたたかいによるしかないことは確認しあった。
話しあいは短時間であったが、またあつまって、話しあいをもつことを確認しておわった。
その後、会社は労働者の反発がつよいことをみて、6月実施予定を半年間延期した。気をゆるめることなく、ひきつづきがんばっていく。
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