『労働通信』2000年5月号
京都の小学校2年生男児殺害事件、新潟の少女監禁事件はおおくの人人をおどろかせた。マスコミは共通して、犯人個人の生育歴、学校生活、家庭環境の問題をとりあげている。また、報道によると、二人とも学校の成績はよかったが、高校なかば、あるいは高校卒業後、挫折したという。こんにち、家庭、学校、地域をふくむ教育問題は人人の大きな関心をよんでいる。
学校現場でおこなわれているのは、「個性重視」といいながら、内容は差別、選別の能力主義教育である。学校現場では、「できる子ども」「できない子ども」の差別、選別が日常普段におこなわれている。
この差別、選別の能力主義教育は、友だちを思い、ともに学び、成長していこうとする、おおくの子ども、生徒の願いと対立している。資本主義社会における教育は、企業が国内外の競争にうちかっていくのに役立つ少数のエリートと、従順で低賃金の多数の労働者をつくることを目的にしている。
「競争の場をじゅうらいのように単一化するのではなく、各人の個性や創造性を最大限に発揮させるよう多様化していくことがたいせつなのである」(1985年、日本経済調査協議会)。
「これからは、いかにあたらしいものをうみだしていくか、すぐれた特徴をもったスペシャリストをどれだかあつめていくかが企業活動の勝負どころになるとおもう」(1995年、日経連副会長)。
つまり、外国資本との国際競争にうちかつ経営戦略や「創造的な技術」を開発する能力をもった一定数の人材を育成する。一方で、大多数の労働者は、企業が必要なときに、必要な人数だけつかい、不要になれば解雇することができる労働力として育成するという内容である。
こんにち、欧米の外国資本との市場争奪の激化や、インターネットなどの「情報化」により、政府、文部省は教育体制、内容を大きく「改革」しつつある。
文部省は、教育の機会均等などをうたった教育基本法、学校教育法のみなおしをはじめた。経済たてなおしにつづく「最優先課題」として、小渕前首相は教育改革をかかげ、「教育改革国民会議」を設置した。教育基本法に「愛国心」をもりこむことや、六・三・三制のみなおし、少人数学級の実現などが国民会議のテーマとなっている。また、文部省は2000年1月、学校教育基本法施行規則(以下省令)を改正し、同時に事務次官通知を都道府県教育委員会に通知した。改正箇所は、@校長、教頭の任用資格のみなおし、A職員会議の設置(条文に明記)、B学校評議員の設置(条文に明記)などである。今回改正された省令等は、中教審の答申をふまえている。
学校評議員制度
文部省の諮問機関である中央教育審議会は昨年、地域の住民が校長にたいし授業内容や生徒指導について助言する「学校評議員」制度の導入をきめた。その趣旨は、「学校をひらかれたものとし、学校の経営責任をあきらかにする」ことにある。
委員は、「校長の推薦にもとづき教育委員会が委嘱する」。人選の範囲は、「学校内外の有識者、関係諸機関、青少年団体等の代表者、保護者など」となっている。
東京都教育委員会は先どりして、「学校運営連絡会議」を設置し、これを母体に「外部評価委員会」をおき、学校が達成した目標の実施状況を評価する構想だ。評価項目は、学校運営、教科指導、特別活動、生活指導、進路指導、健康・安全指導などである。
これは地域の「有力者」、「著名人」が学校教育の内容に干渉、介入するものであり、これによって、文部省、教育委員会、校長の「指導」に反対するか、積極的でない教師はリストアップされ、排除される危険性をもっている。つまり、地域ぐるみで学校、教師を監視、管理していこうとしている。学校、教師を監視、管理することは、子ども、生徒を監視、管理するということで、思想・信条の統制につながる。
教員免許なくても校長に登用
文部省は、公立の小中高校の校長、教頭の任用資格を来春から大幅にゆるめ、小中高校の教員の経験がない人でもなれるようにする。中央教育審議会の答申でうちだされた外部からの人材登用をうけたもので、年内にも学校教育法施行規則を改正し、来年4月から施行する。そこでは、つぎの点を検討している。
「教育にかんする職」とは、学校事務職員、大学教員、少年院・救護院の教官にかぎられている。また、学校運営についての権限が教育委員会から個個の学校にうつされるのにあわせ、校長・教頭の研修に企業経営の専門知識教育をもりこむことも検討している。
社会人教師の免許取得を容易に
文部省は、社会人先生が大学などで一定の単位をとれば教員の普通免許がとれるようにし、退職の年齢まで先生をつづけてもらえるようにする考えだ。この特別免許制度は、「とかく閉鎖的で、視野がせまくなりがちな学校に外部の血を注入しよう」と、1989年にはじまった。企業で海外勤務がながい人が英語教員にむかえられるケースがおおいが、ほかに元新聞記者が社会科をおしえたり、水産庁の元職員が高校水産科の先生になったりと、学校の「活性化」に役立っているという。
人事考査制度
東京都教育委員会はこの4月から、「教育職員の人事考課制度」を導入する。
「教育職員の資質、能力、モラルの向上、適材・適所の人事配置や学校組織の活性化をはかる」ことを目的にしている。「学級指導」「生活指導」「学校運営」「特別活動」などについて、教職員が校長、教頭との面接をつうじて目標を設定し、その成果を自己評価する「自己申告制度」と、成果や努力を校長、教頭、教育長が評価する「業績評価制度」の二つからなる。
自己申告は目標設定、その追加、変更、自己評価の年3回。業績評価は五段階評価で、校長・教頭が「絶対評価」をおこない、教育長が「相対評価」をおこなう。
都議会文教委員会では、「まともな評価がされていないのは教師の世界だけ」「指導にしたがわない教員は教職の場からはずすとか、だんこたる措置をやるべき」等の意見がでている。また、東京教育再興ネットワークの藤岡信勝東大教授(自由主義史観の提唱者)を東京都教育委員におす動きがでている。
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