『労働通信』2000年1月号
危機的状況にある日本経済がもちなおしつつあると、独占資本と政府はマスコミをつかって宣伝している。こんにちの経済のもちなおし宣伝は、ほんとうの意味での日本経済の安定でもないし、広範な人人の生活の安定をうながすものではない。
いぜんとして失業率4.6%(完全失業者320万人)をつづけている。失業問題は、現役労働者だけの問題ではない。卒業予定学生の就職内定率は大学生が63.6%、高校生が41.2%といずれも調査開始いらい最低を記録している。就職がきまっていない大学・高校生は37万1000人にのぼるといわれている。
このように、労働者と人民が職をうばわれ、路頭にまよっているという状況のもとで、独占資本は鉄鋼、半導体、紙・パルプ、情報通信など六業種で経営を「改善」している。ぼうだいな不良債権で経常赤字をかかえていた都市銀行の第一勧銀、富士、日本興業、東海、あさひ、住友、さくらは、超低金利による利ざやでぼろもうけし、さらにリストラによって黒字転換をはたした。半導体では九月中間決算で日立が黒字に転換し、三菱電機も黒字を確保し、富士通は増収増益を記録した。
金融ビッグバンとインターネットを柱とする情報化を中心にした産業構造の転換、「経済構造改革」のもとにすすめられているリストラ「合理化」攻撃の特徴は、企業の大型合併、独占集中のなかでの大量の首切りであり、金融、鉄鋼、非鉄、自動車、交通・運輸をはじめ、資本主義をささえている基幹産業で強行され、これをてこにしてすべての産業、企業で進行していることである。
金融ビッグバンが促進され、東海銀行とあさひ銀行、住友銀行とさくら銀行、日本興業、第一勧業、富士の合併、大和銀行と住友信託銀行による新信託銀行の共同設立、生命保険最大手の日本生命保険と信託銀行トップの三菱信託銀行の提携と合弁会社の設立方向などに象徴されているように、大型合併が促進されている。そのなかで、東海、あさひの4000人、日本興業、第一勧銀、富士の9300人の大量の人員削減にみられるように、金融産業では数万人規模の首切りを強行しようとしている。
NTTは分割後、9月の連結決算でNTTドコモの好業績にささえられ増収増益を記録しているにもかかわらず、東西地域会社の販売、営業窓口などの拠点数を現在の3分の1に削減し、東と西をあわせて2万1000人を削減するというリストラをうちだした。鉄鋼では、新日鉄と日新製鋼のステンレス事業で全面的な提携など、最大手による大型の事業再構築が業界の再編を促進している。自動車では、ルノーの傘下にはいった日産が「スカイライン」などを生産する主力拠点の村山工場をはじめ、全国の主要工場を閉鎖、統合し、2万1000人の削減をうちだした。三菱自動車は9900人の人員削減計画を発表した。また、レナウンは、宇都宮工場など全国六工場と昭島事業所を閉鎖し、生産などの機能を物流センターに集約するとともに、200人の人員削減を柱とするリストラ計画を発表した。
以上のリストラの特徴的な状況は、たんに一工場や一企業だけの問題にとどまらない。中小企業はつぶされ、商店街は火がきえたようなり、まさに市や町はゴーストダウンさながらの様相を呈し、大きな政治的、社会的な問題になっている。
独占資本は、国家のすべての機構を動員してこの政治的、経済的危機を打開しようとしている。小渕政府は、国会で「産業再生法」をつくり、「経済再生対策」と雇用面の柱として「中小企業地域雇用創出特別奨励金」を新設し、インターネットなど情報関連の社会基盤整備に重点をおき、中小企業対策や社会資本整備を中心に総事業費一八兆円をもりこんだ経済対策をうちだし、国家資金を湯水のようにつぎこんでリストラ「合理化」を促進し、独占資本の危機をすくおうとしている。
このようなリストラをすすめる一方で、政府と独占資本は、「周辺事態法」や電話の盗聴を公然と認める「組織犯罪対策法」(盗聴法)。オウム真理教の犯したような犯罪の再発を防止するとして制定されたオウム新法、国民総背番号制への布石である住民基本台帳法の改悪など、反動的法案や法の改定が自民、自由、公明、民主などの賛成であいついで短時間のうちに可決、成立させられた。
基幹産業労働者の大量の首切り、工場・事業所の閉鎖による生産力の破壊によって危機を打開するのが資本主義制度のたどる必然の結果である。これらのことや反動的法律の成立、警察組織に代表されるような国家組織の腐敗と堕落は、こんにち、すでに資本主義制度には生命力がなくなっていることを意味している。
連合など労組中央は、リストラ「合理化」にたいして下部労働者の要求をとりあげないし、たたかいを組織しようとしていない。連合は、日経連と共同で「雇用安定宣言」を発表するなど、独占資本のすすめる「経済構造改革」に加担している。
こんにち、下部の組織労働者にとって重要なことは、職場で具体的にかけられている首切り・解雇と非正規雇用労働者の拡大、サービス残業の強要と残業カットなど賃下げ、賃金の遅配・未払い、成果・実績主義賃金制度の導入、勤務形態の改悪などに反対するたたかいをすすめながら、この闘争が人民の犠牲によって促進されている「経済構造改革」などに反対する政治闘争に発展するように奮闘することである。