『レーニンと労働組合』日本語版への序文

  呂嘉民

「レーニンと労働組合――レーニンの労働組合学説史」は、わたしが 1987 年に書き上げたものであり、今から 13 年も前であった。この 13 年間のあいだに、国際共産主義運動、国際労働運動およびレーニン主義の地位と意義にも、きわめて大きな変化が生じた。レーニンが創設したソ連の旗は、変えられており、レーニンもくつがえされたようで、中国にいたっても、レーニンの理論は大きな衝撃をうけている。

 それでもこの本は、まだ価値があるだろうか?

  この本がすくなくとも今日の世界で学説史という形態で、レーニンの労働組合理論を系統的に記述した唯一の専門書であるといえるとわたしは考える。この専門書は、社会主義国家が政治的民主主義をいかに実現していくかにかんするレーニンの独特な理論を紹介し、記述したものである。

 レーニンは、かつて十月革命の最初の数年間、「労働組合の国家化」政策を提起し、また実行し、国家機能を労働組合にひきわたし、国家機能を労働組合にになわせることによって労働者の国家統治への情熱をかきたたせ、そのご、権力を労働者に返還し、権力を人民に返還するという民主主義の目標を達成しようとしたのである。しかし、当時のロシア労働者階級の民主主義的素質と管理能力は大変ひくく、「労働組合の国家化」政策は、権力を樹立し、権力を強固にするうえで巨大な役割をはたしたにもかかわらず、どうじに政治経済面で重大な混乱をもたらした。

 そのご、レーニンは、「労働組合の国家化」の理論をあらため、独特な「労働組合国家融合論」をうちだした。かれは、労働者階級が国家を統治することによって民主主義的自治と国家の消滅に到達していくという最終目標を変えることはできないが、しかしこの目標を実現するにはいくつかの条件を必要としていると考えた。つまり労働者階級の民主主義的素質と管理能力を不断に引き上げさせ、また民主主義と管理の水準の向上にともなって、労働組合がしだいにその力がおよぶところの一部国家機能をにない、また不断に国家機能をになう範囲を拡大し、最終的に完全に国家機能をになうところまでにいたるのである。それをもって最終的に権力を人民に返還し、全社会の自治と国家の消滅を実現するということである。

 上述したこれらの観点と理論は、つまりレーニンの「労働組合国家融合論」の基本的内容である。レーニンの晩年の数多くの民主主義的思想は、労働組合理論、とくに「労働組合国家融合論」の理論のなかに包含されている。この理論は、いくらかのさけがたい空想的要素をおびているにもかかわらず、しかしこの理論のなかに含まれている民主主義的精神は、じつにえがたい価値をもっているのである。すくなくともレーニンは、社会主義国の政権党と国家組織が国家権力と機能を不断に労働者に返還し、人民に返還しなければならないことをいっかんして堅持していた。したがってレーニンのこの思想は、永遠に時代遅れとならず、永遠に現実的な意義をもつものである。

 レーニンが逝去したのちに、この理論は、高閣にしまいこまれ、政権をにぎっている各共産党がレーニンの理論とは反対に、よりおおくの権力集中の道をあゆみ、社会主義を全地球的規模の大敗北へとみちびいた。もし現存する社会主義国がこのような敗北を回避したければ、かならずしだいに権力を労働者に返還し、人民に返還するという大方向へむかって前進しなければならないであろう。

 土肥民雄氏は、「レーニンの労働組合学説史」を大変重視しており、かれもレーニンの独特な労働組合理論がいぜんとして現実的な意義と理論的な価値をもっていると考えている。かれはさらに、レーニンの資本主義の時期における労働組合理論が日本の労働組合にも指導的、参考的価値を有していると考えている。わたしは、日本の労働組合と労働組合運動について知るところが大変すくなく、したがってわたしは、これにまちがって批評することができない。しかし、わたしは、レーニンが労働組合理論への見解がもっとも多い理論家と革命家の一人であり、かれの系統的な労働組合理論を理解することは、労働組合活動家にとってなお大変必要であると確信しているのである。

 わたしは、土肥民雄氏がこんなんな条件のもとで、「レーニンの労働組合学説史」を日本語に翻訳し、日本の読者に紹介することができたことに大変な感謝の意を捧げたいのである。

                            2000 年 4 月 2 日

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著者略歴

呂嘉民(ろ かみん)

1946 年 4 月 2 日 上海嘉定県生まれ。
1967 年  北京中央美術学院付属高等学校卒業。
1967 年から 1978 年まで知識青年として内蒙古へ下放。
1978 年  中国社会科学院研究生。
1982 年  修士学位取得。
1983 年  中国労働運動学院教官。
1987 年  同学院副教授、そのご同学院の労働運動研究室で労働運動理論の研究。

主要著作
『レーニン「共産主義の学校」理論の形成を試論する』
『レーニンの「労働組合国家融合論」の形成、意義および実際の運用について』
『レーニンの労働組合学説史』
『労働組合経済実業について』
など。

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